ヴァカアポ。クソギャグ。書いている人のメンタルが死にかけてたとき(ついったーでお礼書くのに悩んでた時笑)に書いたのでなんだかちょっと鬱々としたシーンがあります
あんまりギャグ感ない回で申し訳ないですが。あとカラオケネタ薄いですアハハ。
この世界線の二人は「お弁当デート」行ってないので、いまだにお兄ちゃんが「付き合え」なんてわがままを言うようなことを経験していませんってことにして。
※兄弟の両親が早くに亡くなっている捏造設定を生やしました
昨日はたくさん運動して二人揃ってベッドでゆっくりと眠れた。
……トレーニング的な意味で。
今日の朝食はプレーンオムレツ。作るアポロニオの表情は明るく、調子は元に戻ったようだ。
「ヴィランと戦わなくて力が有り余っていたのもあるかもしれん」
「平和になるのも良し悪し、じゃ困るよねえ。本格的にトレーニング器具買う?」
この部屋広いし、とヴァッカリオは続けた。
「ん、わざわざこちらに器具を置くより、隣の部屋が余ってるから、まるっと向こうをトレーニングルームにした方が良いのではないか?」
「隣の部屋……?あの、隣って、隣室?」
部屋番号を言えば、アポロニオはコクリと頷いた。
「ここはフロア全て私が購入した。深夜や早朝に出動することも多いし、保安上の都合からも一般人が同じフロアに住まうのは問題があるからな。かといって、空室のままではオーナーに迷惑がかかる」
「うそでしょ」
この部屋ですら価格を聞いて目玉が飛び出たというのに?ワンフロア?
4戸建てワンフロア、いったいおいくら億円?
ヴァッカリオは目を白黒させながらブラックコーヒーを何とも言い難い気持ちと共に飲み込んだ。
「ああ、お前が越してくる気があるなら、適当に部屋を選んでいいぞ。一番奥の部屋は倉庫になってるからそれ以外で」
全部屋共通の生体認証だからお前ならどの部屋も入れるはずだ、そう言ってアポロニオは書斎へと出勤していった。
4日目:家カラオケをする
「おじゃましまーす……」
朝の家事を片付けたヴァッカリオは、さっそく隣室へと足を踏み入れていた。
少し埃っぽい空気にがらんとした部屋、生活感ゼロ。買ってそれっきり、ということがよくわかる。
部屋の間取りはアポロニオの部屋と同じらしい。テレビやエアコン、冷蔵庫も一式揃っているのだが、最初からコミコミなのか……なんだか、よくわかってない兄が引っ越す時に業者に丸投げした結果な気がする。金持ちって怖い。
一応、いずれも電源は入っておらず、未使用のようだった。
「っていうか、結婚したのに別居っていうのもなあ……」
がらんとしたリビングの中央でヴァッカリオは頭をかいた。
まず、アポロニオとしては様々な都合上、ここから引っ越す気はない、というか引っ越せない。結婚したので引っ越します、が通用しない立場だから。
となると、ヴァッカリオが越してくることになるのだが、正直、アポロンシティの空気は肌に合わない。
パワフルワン片手に酔っぱらいながら店を冷かしつつ歩くような空気ではないからだ。
みんな真面目すぎなんだよ、といつも思う。大体、兄のせいなのだけど。
特に面白いものもなかったので、次の部屋へ。
こちらは、ここまでの二部屋と雰囲気が異なっていた。前の二つは白を基調とした普通の部屋だったが、この部屋は逆に黒を基調とした部屋だ。
シックな雰囲気、と言えば聞こえは良いが……どちらかと言えば、夜のお店のようだ。バーでもここに置くつもりだったのだろうか?金持ちが専用のラウンジを作るとか?
(金持ちの考えることはよくわかんねえ……)
若干、げんなりとしつつ、一応室内を見て回る。と、そこでファッカリオが見つけたものは!
「カラオケ!はあ!?」
ますます、夜のお店(オネーチャンがいそうな方の)っぽくなってきてしまった。アポロニオは一体何をどうしてこの部屋のセッティングを頼んだのだろう。
試しに電源を入れてみる。点いた。普通に。
うーん、と悩みつつも端末で曲を探してみる。なんと、ネットワークにもつながっているようで最新のヒット曲も選べるようになっていた。
……ということはつまり。歌うしかないでしょ、と。
ヴァッカリオはマイクを持つと、自分のお気に入りの曲を選んだ。このマンションの防音設備は完璧である、ということを知っているから、好きなだけ歌える。
どうせやることもなくて暇だし。トレーニングはもう昨日やりまくったし、アダルト動画探すのも飽きたし、パワフルワンは飲めないし。そうなれば、もう歌うしかないでしょ……!
かくして、ヴァッカリオの一人リサイタルは開幕した。
アポロニオがランチをとろうと書斎から出たところ、部屋の中は静まり返っていた。
「ヴァッカリオ?」
トイレか?シャワーか?と探してみるが、どこにもいない。朝の食器はすべて片付けてあるし、洗濯も済み。家事はすべて終わっているようだ。
玄関に、靴もない。
どことなく、不安な気分になる。もしかしたら、昨日の夜、相手ができなかったことで嫌になって帰ってしまったのかもしれない。
端末に「どこにいる?ランチにしよう」とメッセージを送って、昼食の準備に取り掛かる。
さっと作った簡単な野菜炒めを盛りつけ、端末を確認するがメッセージに既読サインすらついていない。
……そういえば。隣室を見に行くという話をしていたような気もする。
アポロニオはパタパタと玄関へ向かいスニーカーを履くと、行儀悪くかかとを踏んだまま飛び出した。
隣の部屋へ。
「ヴァッカリオ?いないのか?」
玄関に靴はないが、念のためひととおり見て回る。いない。
アポロニオは自分の心臓の鼓動がどんどん早くなっていくのを自覚した。嫌な気分だ。
戻り、次の部屋へ。
――と、扉を開けた瞬間。
「っ!?」
大音量の音楽が聞こえてきた……ヴァッカリオの歌声付きで。
アポロニオは大きく息を吐いた。良かった、ヴァッカリオは家に帰ったわけではなかったらしい。
上がりこんで、廊下をぺたぺたと裸足で歩いて扉を開く。
「~~♪~~~♪ってお兄ちゃん!?」
「あ、ああ、楽しんでるところ邪魔したな……ランチの時間だが、どうするのかと思って……」
えっもうそんな時間?とヴァッカリオが持っていた端末を操作した。
「あ、ごめん、メッセージ気づかなかった」
「いや、いいんだ。ランチはどうする?」
「食べるよ、そういわれてみればおなかすいたなあ」
へにゃり、と笑ってヴァッカリオはマイクをしまい、機器の電源を切った。
「探しちゃった?」
「てっきり、家に帰ったのかと」
「あー……いや、家には帰んないけど」
アポロニオの部屋に戻りながら、少しヴァッカリオは考える。前を歩くアポロニオは、スニーカーのかかとを踏んでいた。それだけ慌てたのだろうし、今も緊張しているのではないだろうか。
食卓に着く。野菜炒めはちょっと冷めていた。
「うーん……お兄ちゃんはおいらと一緒に暮らしたい?」
「な、なにをいきなり……それは……しかし、ヴァンガードベースは遠くなるし、お前はこっちの空気には馴染まないだろう?無理する必要はないよ」
優しい声音でヴァッカリオに言うと、アポロニオはまた野菜炒めをつつき始めた。
ヴァッカリオが聞きたいのは、そういう話ではないというのに。
「そうじゃなくてね、おいらの都合は置いておいて、お兄ちゃんとしては一緒に暮らしたいのかどうか、ってこと」
目をぱちぱちするアポロニオを見て、ヴァッカリオはゆっくりと言葉を続けた。
「おいらは一緒に暮らしたいと思うよ」
「し、しかし、それではお前に負担が……」
少しだけ攣ったような声を出すアポロニオ。ヴァッカリオは席を立つと、アポロニオのそばにしゃがみこんだ。必殺の上目遣いだ。
「おいらの負担うんぬんは置いといてさ、お兄ちゃんは、一緒に暮らしたいの?それともイヤなの?」
「それは……できることなら、一緒の家に……住みたい。嫌ではない」
「良かった~、一緒に住むの嫌だって言われるかと思ったよ」
椅子に座ったアポロニオの腰を抱き込み、腹筋のついた柔らかくはないけど手触りが最高な腹部に頭をぐりぐりと擦り付ける。マーキングと言ってもらっても構わんぞ。
「ちっ違う!一緒に住むといったら、お前にばかり負担が行くだろう、だから……お前は優しい子だから、私が言ったら、それを叶えようとしてしまう。そういうことは、もうやらなくていいんだよ、ヴァッカリオ」
突然甘えてきたヴァッカリオに戸惑いながらも、膝に乗った弟のふわふわした髪をすいてやった。
その優しい手つきに、ヴァッカリオはどうしようかな、と悩んだ。悩んだけれども、たぶん、これからの二人には必要なことなんだろう、と思う。だから言うことにした。
「あのね、お兄ちゃん我慢しすぎなんだよ。おいらのこと優先しすぎ。もっと、わがまま言ってほしいな。おいらに甘えてよ。今だって一緒に住みたいんでしょ?ちゃんとそうやって言ってくれれば、大丈夫だから」
「……しかし、私のような者に、お前の都合を合わせるわけには……」
「……お兄ちゃん、ほんと自己評価低いよね……」
まあ、原因は大体わかっている。やっぱり10年間のアレだアレ。本当は言いたくなかったのに泣いて喚いて、嫌がる弟から無理やり聞き出した、とか、弟のことを何も察せずに、自分の都合で傷つけた、とか。
とにもかくにも、アポロニオの無意識下に「ヴァッカリオに自分の都合を押し付けてはいけない」「ヴァッカリオの希望を最優先すべき」というルールが出来上がってしまっているようだ。それでは、まるでアポロニオはヴァッカリオの手下か奴隷だ。非常に良くない。
「す、すまない、その、わがまま、を……」
少し言葉を止めると、アポロニオは膝上のヴァッカリオの頭を抱え込んだ。ふわふわした髪の毛に鼻先を埋めて、もごもごとしゃべる。
「わがままとは、一体、何なのだろうか……お前はよく甘えてほしい、と言うのだけれど――」
ほとんど消え入りそうな、泣きそうな声だった。「甘え方がわからない」と。
そう言われてみればそうだった。アポロニオは早くに両親を亡くし、幼いヴァッカリオの面倒を見つつ、学校では奨学金のために優等生であり続け、その次はすぐにヒーローとして市民を守り、導く存在に。
そこそこの長い人生の中で、アポロニオが甘えることなんて、ほとんどできなかったのだ。
逆にヴァッカリオはアポロニオにこれでもかと甘やかされ、ヒーローになっても素晴らしい先輩や親友に甘やかされ、今だって優しい職場でいろいろな人に甘やかされている。
そもそもの、甘える閾値が二人の間で違いすぎた。甘えないことが当然のアポロニオと、甘えるのが当然のヴァッカリオ。
「……ごめん、逆にお兄ちゃんを困らせちゃった」
「違うぞヴァッカリオ、私が不出来なばっかりに……」
「あ~やめやめ!」
ヴァッカリオはアポロニオの頭と膝の間から名残惜しくも身を引くと、こちらを見る兄の額にキスを落とした。
「おいら達、神話特性も性格も正反対だから、噛み合わないことぐらいあるんだよ、うん」
「それは……そうだな……」
甘え下手と甘え上手。まさか、そんなところまで正反対だったとは。
立ち上がってぎゅ、とアポロニオの頭を抱え込むように抱き締めると、おずおずとヴァッカリオの腰に手が回る。
「でも、ちょっとぐらい噛み合わなくてもおいらはお兄ちゃんのこと嫌いにならないよ。むしろ、そういうとこも大好きだよ」
「!わ、私もだぞ、ヴァッカリオ。お前のことを嫌いになんてなるものか」
でも、あの10年のときボロクソだったじゃん、というツッコミはさすがのヴァッカリオもしなかった。あれは、まあ、表面上のものだろう、うん。本気の本気だったら、野菜炒めほったらかして抱き合ったりしないだろうし。
なんとなく手放し辛くて、無言で相手を抱き締め続ける。
「あ~ずっとこうしてたいけど、お兄ちゃんそろそろ昼休み終わりだねえ」
「む、そうだな。今日は夕方いっぱいまでやることがたくさんある」
残念。午後にゆっくりお昼寝でもしようかと思ったが、それは叶わないようだ。
「お兄ちゃん、明日も仕事だから……エッチなこと、できないね」
「う……」
顔を真っ赤にしてうつむくアポロニオのうなじをくすぐりつつ、顎を取り、リップ音をたてて唇を奪う。
「エッチなことしてるときのお兄ちゃんは結構甘えてくれるんだけどなー」
「……そ、そうなのか?」
そりゃあ、キスをねだったり、一人でできないもん!って言ってきたり、しゃぶらせて欲しいとか飲ませて欲しいとか……後半は若干、ヴァッカリオのフィルターがかかっているような気がしないこともないが。
「その自覚はないが……お前があまりにも優しすぎてすぐ気持ち良くなってしまうから、その、甘えやすい、のかもしれないな」
「~~~!お兄ちゃん、ほんとさあ……!」
もう一度思い切り抱きしめると、ヴァッカリオはアポロニオの耳元で「最高」と囁いた。
アポロニオは真っ赤な顔をして、困ったように微笑み、ヴァッカリオに負けないぐらいの力強さでその長身を抱きしめたのだった。
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