Runaway

頭のおかしい一連のXII家出ネタ(間違えてピュアポに「ママ!」って呼び掛けたXIIをヴァとツンアポが笑いすぎてXIIが家出)の話。VIとXIIガチめの喧嘩(?)して鼻血とか出てるんで注意してください。R18は元気がなかったのでカットしました。


あ、と三人が声を挙げたときには、すでにディオニソスXはリビングから飛び出していて、それからすぐに玄関の扉を叩きつける音がした。我に帰ったアポロニオが、慌てて包丁を置いて後を追おうとする。

「お兄ちゃん待って!」
「なんだヴァッカリオ!」
「追っかけるのは、お兄ちゃんじゃなくて……」

二人分の視線を受けたアポロンVIは一瞬だけ息を詰めたような顔をしたが、すぐ「行ってくる」と言ってディオニソスXIIと同じように、玄関のドアを叩きつけて出て行った。

「……大丈夫だろうか……」

アポロニオが心配そうに二人の消えた廊下を見ながら、おろおろとヴァッカリオが座ったソファの隣で落ち着き無く足踏みをする。

「大丈夫に決まってるさ、あの二人なんだから」
「しかし……」

ヴァッカリオは立ったままのアポロニオの手を掴むと、軽く引っ張って隣に座るように誘導する。軽い音を立ててソファに座り込んだアポロニオの肩をヴァッカリオは抱いて、落ち着かせるように優しい声で語りかけた。

「おいら達だって仲直りできたんだし……それに、ディオニソスXIIの隣にいるべきはおいらでもお兄ちゃんでもなく、アポロンVIだ。そうでしょ?」
「そうだな……」
「……二人が帰ってきてから夕食にしようよ。食べ盛りのディオニソスXIIがいるんだから、たくさん作らないとね」

おいらも手伝うから、とヴァッカリオはソファから勢い良く立ち上がった。アポロニオも、不安そうな顔をしつつも立ち上がる。

「あと……ほら、おいらが反抗期の時にも、こういうことあったでしょ。ディオニソスXIIも、似たようなもんだって」
「確かに……そうか、ディオニソスXIIも反抗期なのか」
「まあ、そんなもんだよ」

そう言えばようやくアポロニオは安心したようだった。それで納得されるのもヴァッカリオとしては微妙な気分ではあるけれど。
で、何を手伝えばいいの?とアポロニオの隣に立って食材を見下ろす。夕飯はオムライスと言っていたが……自分でもできるような内容だと、ヴァッカリオとしては非常にありがたい。
固い顔したヴァッカリオを見上げたアポロニオは、ふふ、と微笑んでから玉ねぎの皮むきをお願いするのだった。

 

軽々と高層ビルの屋上に降り立ったアポロンVIは、貯水タンクの影に目当ての人物を発見した。何かあった時、ディオニソスXIIが隠れる場所と言えばここだ。

「……探したぞ」

声を掛けてもディオニソスXIIはアポロンVIの方を向きもせず、ただ眼下に広がるディオニソスシティを見つめている。
アポロンVIは少しばかりため息をつくと一歩踏み出す。

「悪かった。笑いすぎた」
「……」
「まあ、間違いは誰にでもあることだから……」
「……そういう話じゃない」

低く、重い声がディオニソスXIIから紡がれる。アポロンVIは、その声音に潜んだ僅かな殺気を嗅ぎとり、警戒を強めた。

「だったら、どういうつもりだって言うんだ?」
「……」
「ディオニソスXII」

アポロンVIが名前を呼んだ瞬間、がばりと顔を上げたディオニソスXIIがまるで瞬間移動でもするかのように、コンクリートの床を力強く蹴り飛ばしてアポロンVIの面前に迫る。反射的に顔をガードしたアポロンVIだったが、ディオニソスXIIの重いパンチを受け止めきれるほどの体勢は取れなかった。自分の腕ごと顔に強く叩きつけられ、吹き飛ばされる。

屋上の床を転がりながら、すぐに体を起こして横に飛んでディオニソスXIIの追撃を避ける。私闘であるから、神話還りの力は使えない、使わない。純粋な肉弾戦でのやり取りとなると、どうしても体格がよくて接近戦の得意なディオニソスXIIに分がある。

「チッ!」

ディオニソスXIIの前蹴りをスレスレでかわして懐へと潜りこむ。鋭い蹴りはアポロンVIの顔の横を通り過ぎ、そしてすぐに引き戻された。その一瞬の隙をついて、アポロンVIは鳩尾をディオニソスXIIの鳩尾を狙う――がそれより先にディオニソスXIIの脇に折りたたまれていた腕が伸びてきてアポロンVIの手首を掴んだ。

片足を軸にして、ディオニソスXIIが片手で小柄なアポロンVIの体を投げ飛ばす。その動作程度は織り込み済み、とアポロンVIは空中で器用に一回転して着地した。ディオニソスXIiが間髪入れず襲いかかってくるのを寸でのところで避け、カウンターで顎を狙って掌底を打つ。

「!」
「……っふ!」

ディオニソスXIIが掌底を受けつつも、頭をそらすことで衝撃を逃がす。アポロンVIが期待したほどのダメージを与えられず、逆にディオニソスXIIの裏拳をまともにこめかみに食らった。一瞬、三半規管に衝撃が伝わり、ぐらり、と視界が揺らぐ。倒れないように足を踏ん張る姿をディオニソスXIIが逃すわけもなく、重い横蹴りがアポロンVIの腹部を打ち抜いた。

「がッ……ぐ、おえっ……」

思わず、地に膝をつき、軽く胃液を戻す。いくら神肉を鍛えたといっても、相手も同じように鍛え抜かれた神肉の持ち主だ。しかも、得意な接近戦で、まったく手加減をしていないときた。アポロンVIが唾を吐き、頭上に覆った影を見上げる。

「……満足かよ」
「……鼻血が出てる」

ディオニソスXIIに指摘され、アポロンVIは鼻の下をぬぐった。床に落ちていたのは、胃液だけではなかったようだ。ジャケットの袖に、真っ赤な筋が描かれる。最初の一撃で、自分の腕ごと鼻をやられたのが効いた。

ぐ、とディオニソスXIIがアポロンVIの襟元をつかんで体を強引に持ち上げる。締まる首に、アポロンVIはディオニソスXIIの腕に手を添えて、外そうとするが馬鹿力にかなうわけもなく。

それでいて、ふ、とディオニソスXIIの金色に輝く瞳の中に、いつもの光を見出したアポロンVIは添えた手をするり、と逞しいディオニソスXIIの両腕に這わせた。それが、合図だったのか、ディオニソスXIIが血に濡れたアポロンVIの唇に食らいつく。

「んっ……」

強引に入り込んできたディオニソスXIIの舌は、血の味をまとわせていて、アポロンVIは首を絞められる苦しさに喘ぎながらもそれを存分に味わった。

「……っ、けほっ、は、ぁ……っ」

ようやく、ディオニソスXIIの唇から解放されてつま先立ちだった足がかかとまで地に着くように降ろされた。窒息寸前だった肺に、新鮮な空気が一気に流入してアポロンVIは大きく胸を上下させた。それを、ディオニソスXIIはじっと見下ろしている。

「……ヤらせろ」
「お前、さっき運動しただろ……んんっ!」

アポロンVIが抗議の声を上げるより早く、ディオニソスXIIはその体を強く抱きすくめ、アポロンVIの首を折れるのではないかというほどに折り曲げて、薄く開いた口を上向かせて味わう。アポロンVIの手はディオニソスXIIの両腕を引きはがそうと一瞬だけ努力をしてから、あきらめたようにディオニソスXIIの腰に回ることになった。二人の体が、完全に密着する。

「勃ってるではないか」
「お前こそ」

ぐり、とディオニソスXIIが腰を押し付けると、ちょうどヘソあたりに硬く猛ったものが当たり、くすぐったさにアポロンVIは腰を引いた。が、それを許さないというようにディオニソスXIIがもう一度強く抱き寄せる。

「……夕飯の時間までには帰るぞ。アポロニオが心配する」

アポロニオの名前を出すと、ディオニソスXIIは苦い顔をして、そのあとに神妙な顔をすると「わかった」と短く答えた。

 

ようやく、帰ってきたアポロンVIとディオニソスXIIを、アポロニオは心底安堵した笑みで、ヴァッカリオは何かを確信したようなニヤニヤとした笑みで迎えた。

「ああ、アポロンVI、どうしたんだその血は!大丈夫か!?」
「問題ない、アポロニオ。ちょっと……反抗期の大型犬のしつけに手間取っただけだ」

それより、ジャケットが汚れてしまったから洗剤につけておきたい、と言って、アポロンVIはアポロニオとともにランドリールームに消えていく。

「……で、何発ヤってきた?」
「きめえセクハラ親父」
「明らかにお前スッキリしたって顔してるもんな」
「俺ら、アンタらみたいな枯れたカップルとは違うんで」
「……誰が枯れたって?あ?」
「30超えたオッサンは請われたって何発も出せねえだろ」

やるかこの野郎、とヴァッカリオが立ち上がる。ディオニソスXIIも腰を低く落とし、いつでも迎撃できるように身構える。

「……二人とも!何をしている!!」

……戻ってきたアポロニオに雷を落とされた。いつも甘くて優しいアポロニオだが、怒ると一番怖いというのは皆の共通認識だ。

ディオニソスXIIはおとなしくテーブルについて待ってろ、と言われ、ヴァッカリオは最後までちゃんと手伝え、とキッチンへ引っ張られていく。

素直に椅子を引いてどっかりと座ったディオニソスXIIは、いまさら、部屋に漂うとても香ばしくて食欲を誘う匂いに気が付いた。自然と、腹がぐうと鳴る。夕飯は、確かオムライスだったはずだ。

「腹が減ったな」
「……ああ」

隣に座ったアポロンVIがそう言ったのにディオニソスXIIも頷いた。短時間とは言え、暴れて、それからヤることヤったら腹も空く。アポロニオの卵料理は絶品で、匂いを嗅いだだけでも口の中に唾液がたまる。

「XII」
「なんだ?……っ」

振り返ったディオニソスXIIの目の前に、アポロンVIの端正な顔が迫り、それからちゅ、と可愛らしい音を立てて唇が押し付けられた。

「今度、私も手料理を振るまってやろう」
「お前が?」
「……私も、料理は得意なのだが?」

はあ、と気の抜けた返事をするディオニソスXIIの顔をまじまじと見たアポロンVIは、ぷい、と顔を背けた。ディオニソスXIIのよくわからないところで、またアポロンVIのツンツンポイントを踏み抜いたらしい。よくわからないが、まあ、今夜また抱きつぶせば素直になるだろう、とディオニソスXIIはアポロンVIの顔を見つつ、オムライスがテーブルに運ばれてくるのをおとなしく待った。

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