かみなりのよるに

ヴァカアポの頭の悪いギャグ。可愛い狼男なヴァッカリオと男前な羊男アポロニオしかいません。


※ヴァッカリオがマジでキャラ崩壊してるんで注意

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ディオニソスXIIとして復帰し、いくつか仕事をこなし。久々の大がかりな捕物帖、それもアポロンVIとの共闘ということでヴァッカリオ……のみならず、兄であるアポロニオも大いに張り切っていた。
結果としては市民に被害は出ておらず、物損も最小限ということでそこだけ見れば完璧な片付け方といって問題なかった。

問題があるとすれは、二人の頭と腰周辺。お互いの頭の上に生えた耳と尻尾。英雄庁の医務室でお互いの顔を見て、ふたりそろって大きくため息をついた。

「とりあえず異常なしとは言え……」
「これじゃあねえ……」

ヴァッカリオのため息を受けたアポロニオは唇を尖らせた。

「お前は仮面があったから周りからはわからなかったであろう!?……私なんて……こんな……こんな……」
「あー……明日の新聞記事のトップ絶対これだよね」

頭を抱えようとしたアポロニオは、その頭にある堅い角に触れてまた大きく肩を落とした。
そう、アポロニオの頭にはくるりと渦巻きの形をした羊の角が生えていた。さらに小さくて白くて食べたら美味しそう(ヴァッカリオ談)な羊の耳も生えている。アポロニオの動きに合わせて白い耳がぴこぴこ動くのが非常に可愛かった。
もちろん、短くて白くて食べたら美味しそう(やっぱりヴァッカリオ談)な羊の尻尾も生えている。今はズボンの中に隠されてしまっているが。

では、対するヴァッカリオは何の耳かと言えば、恐らく狼のものだ。大きなグレーの耳と、大きくてふさふさした尻尾。こちらはズボンに入りきらず、今も表に出てふわふわと揺れている。
そして、アポロニオになくてヴァッカリオにだけある特徴的なものが、鋭い牙だ。口を閉じると唇に刺さる、と嘆く程度には立派なもので、おかげさまでヴァッカリオはバカみたいに常に口を半開きにしていなければならなかった。

あともう1つ、ヴァッカリオには大きな悩みがあって……話すと長くなる……ことでもなかった。短くまとめればヴァッカリオは羊の兄を物理的にも比喩的にも食べたくて仕方なかったのだ!頭からまるっと!!

ヴァッカリオとアポロニオは兄弟だけれども恋人であって、ヤることヤってる大人の二人で、しかもいつも抱いてる側のヴァッカリオが狼で抱かれる側のアポロニオが羊ということは、もはやヴァッカリオの悩みは自然の摂理そのものであり、天の采配が異様に空気を読みすぎている、というのが今現在進行形でヴァッカリオを悩ませている問題だ。

これも一言でまとめると「ヤりたい」になる。つまりそういうこと。

比喩的な方はまだしも物理的に食べたいというのは本当に危険だと思う、程度の理性はまだあるが、いつ吹っ飛んでもおかしくはない。大体、アポロニオは天然で煽ってくる雄殺しの男なので、ヴァッカリオはその点についても戦々恐々としていのだった。

今日はもう家に帰って休むように、と医務官から沙汰を渡され、アポロニオは立ち上がった。部下が用意してくれた大きな帽子をどうにか被って、角を隠す。まあ、今さら隠したところで完全に手遅れなのたけど。

「やれやれ……では帰るとするか」

す、と当たり前のように手を出されて、ヴァッカリオは思わず手をとった。医務官と部下は何も言わずに速やかに退室していったのがヴァッカリオの視界の端に映る。ところでヴァッカリオの分の帽子は用意してくれないのだろうか。

「いやいや、待って、一緒に帰るつもりなの?」
「そうだが?夕飯を一緒に食べる約束をしただろう?」
「う……」

キラキラとした眼差しがヴァッカリオの邪な胸に突き刺さる。今、約束を違えるようなことを言えば、間違いなくあの小さくて可愛い耳と尻尾がへにょりと垂れ下がるのだろう。いつも以上に罪悪感にかられる。

早く帰りたくて仕方のないアポロニオに、半ば引き摺られるようにしてヴァッカリオは身の振り方を決める前に英雄庁の玄関口まで来てしまった。何か、起死回生の一手でもないだろうか、と頭を悩ませる。

「む、結構な雨だな……」
「ほんとだね……あのさあ、」

悩みに悩んで、兄の約束にごめんなさいしようとしたヴァッカリオの言葉は、天に轟く雷鳴によってかき消された。この雷、後にヴァッカリオが「起死回生の一手を確かに願ったが、そういうことじゃない」と天に文句をつけることになるとは、本人もまだ知らない。

「これはしばらく止みそうにない……ヴァッカリオ!?どうした!?」

アポロニオが同意を求めて弟を振り返ったところ……その弟は、狼の耳を抑えて踞っていた。

「か、か、か、かみなりの、おとが……うわあ!!」

また、轟音。ひ、と肩を震わせたヴァッカリオはアポロニオの腰に抱きついた。大きなグレーの狼の耳は、髪の毛に隠れるように頭にぺったりと張り付いている。ふさふさの尻尾は器用にヴァッカリオの股の間に挟まっている。

「ああ、聴力が上がっているから音が……」
「ひーー!」
「かわいそうに……」

雷が鳴る度にヴァッカリオがアポロニオに強くしがみつく。昔を思い出すな、とアポロニオが微笑ましく思っていたのも最初のうちだけ。

「ヴァッカリオ!少し力を緩めてくれ、く、苦しい……」
「かみなりーーー!」
「う゛っ!!!」

幼い頃ならまだしも、ヴァッカリオはとっくに成人した男であって、しかも最強のヒーローでもある。そんな男が全力でしがみつけばどうなるか……?
アポロニオのように鍛えた人間でなければ、今頃、大惨事であっただろうことは間違いない。

「くっ……このままでは共倒れになってしまう……!ヴァッカリオ、少しの辛抱だ!我慢してくれ!」

本日の共闘時よりも険しい表情を浮かべたアポロニオは、意を決すると、腰にしがみついて震える狼男を、実に器用にお姫様抱っこ(!)の要領で抱き上げると雨の中を走り始めた。
体格として1.5倍ほどの差はあるから、おんぶをすれば足を引き摺ってしまうし、前で抱き上げるなんてもってのほか。と、なれば、お姫様抱っこをしてヴァッカリオに抱きついてもらった方がまだマシである。

かくして、なんとかアポロニオの家までたどり着いた二人。ヴァッカリオをベッドに叩き込めば彼は布団を被ってかわいそうなほどにぶるぶると震えているし、アポロニオは水に濡れた髪の毛がまさに羊のようにくるくるとパーマを巻き始めた。
あまりの情けない姿に思わずアポロニオは洗面台の鏡を奇声とともに殴り割ってしまったのも仕方なのないこと……だと思う。

「悪夢だ……これは悪夢だ……よし、寝よう」

現実逃避したアポロニオがベッドに潜り込み、角が邪魔で眠れないことに気づいて再びブチギレるのはその直後のことであった。

 

「最悪だ」
「英雄庁はどういうつもりでこの写真にオーケー出したんだろうね?ぶっ殺すぞクソが」
「落ち着けヴァッカリオ、ヒーローらしからぬ言葉は慎むべきだ。……内容については概ね同意するが」

朝、起きてみれば二人ともきれいさっぱり耳も尻尾も消えていた。やれやれ、と思ったのも束の間、ニュース番組や新聞記事には二人の醜態と言っても過言ではない写真で満ちていた!

角と耳の生えたアポロンVIはとにかく、いつ撮られたのかディオニソスXIIの狼尻尾も写真にあるし、英雄庁の玄関で抱き合ってる(厳密にはヴァッカリオが一方的にしがみついてる)写真、さらにアポロニオがヴァッカリオをお姫様抱っこをして連れ去る写真、アポロニオが鏡を叩き割った髪の毛がくるくるになった写真……。

今日は念のためということで休養日にしてはあったが、果たして明日からどんな顔をして出勤すれば良いのやら。

「……お兄ちゃん、見てこれ」

ヴァッカリオが心底嫌そうな顔をしながら見せてきたのは英雄庁からの業務連絡。『ディオニソスXII狼verとアポロンVI羊verのぬいぐるみ企画について』と書かれていた。

アポロニオは何回か瞬きをして、深呼吸をすると、朗らかな笑顔を浮かべながらゆっくりと口を開く。

「よし、全員ぶっ殺しに行こう」

その日、二人の成人男性による英雄庁立てこもり事件があったという話だ。事件については誰もが口をつぐみ、記録にも一切残っていない謎の事件。
たまたま居合わせたディオニソスXIIとアポロンVIが速やかに制圧にあたったのだという。

 

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