兄弟が下品な会話をする話

ヴァカアポのクソギャグ。お兄ちゃんにスクール水着を着せてお漏らししてもらおうとする弟と拒否する兄の攻防。二人とも本気でキャラ崩壊してるので注意。


「私は……」アポロニオは痛々しそうに顔を歪め、「お前の育て方を間違えたのかもしれない」と膝から崩れ落ち、床に蹲って肩を震わせた。

「えっそんなことないよ、ほら、おいらちゃんとゴッドナンバーズにもなったし、あのゼウスIを打ち倒した最強だよ?」
「それはそうだが……」
「ヴァンガードも立派に指揮してるし、部下から三人もゴッドナンバーズを輩出している超一流の指導者」
「確かに……」

打ちひしがれていたアポロニオは、ヴァッカリオの言葉に気を取り直して、目の前に立つ弟を見上げた。そして、彼が手に持っている群青色の布を見てやっぱり打ちひしがれた。

「ヒーローとしては立派かもしれないが、一人の人間として育て方を間違えた」
「大げさすぎない?人の趣味嗜好なんて正解はないんだよ?そもそも、別に犯罪でもなんでもないんだし」
「今まさに犯罪者になりかけていたではないか」
「失礼な!おいらはお願いしただけで強制はしていない!強制わいせつ罪には当てはまらない!」
「わいせつ罪の自覚はあるんだな」

アポロニオの言葉にヴァッカリオはスッと目をそらした。わざとらしく咳払いをして、とにかく、と話を仕切り直そうとした。その様子をアポロニオはジト目で見つめる。

「弟の可愛いお願いなんだよ!?」
「可愛いの位置が違う!」
「そっち!?」

今度はヴァッカリオが膝から崩れ落ちた。ヴァッカはもうすぐ32歳になろうかという180cmオーバーの引き締まった肉体を持つ大柄なアルコール中毒者で、まかり間違っても「可愛い」などという形容詞が似合う男ではない。確かに、幼少の頃は可愛いだの天使だの、よく言われていたがそれも25年も前の話。

「お兄ちゃん、見た目だけじゃなくて頭も25年前で止まってるのかな?」
「失礼なやつだな。お前はいくつになっても可愛い弟だぞ」

アポロニオはすくっと立ち上がるとポン、と手を打った。

「そうだ私なんかよりお前がそれを」
「待ってそれ以上言わないで大変なことになるからグロだから」

慌ててヴァッカリオはアポロニオの口を塞いだ。もごもご、何かを言いたそうにしているが、弟が手を離す気がないことに気づいて大人しくなった。ヴァッカリオがゆっくりと口を解放する。

「お互い、落ち着こう」
「ああ、落ち着くとしよう。少し外の空気を吸ってくる」

額を抑えて一歩踏み出したアポロニオの腕をヴァッカリオが掴む。

「逃さない」
「……勘弁してくれ」
「老い先短い可愛い弟の頼みだよ??」
「お前、このタイミングでそれを使うなプライドはないのか」
「目的の為なら手段は選ばない」
「選べよ!!」

唇を尖らせたヴァッカリオは、胸いっぱいに大きく息を吸うと腹に力を入れて叫んだ。

「お兄ちゃんが女児用スクール水着着ておしっこおもらししてくれる為なら手段を選ばないッッ!!!」
「具体的な内容を大声で言うな!!!やめろ!!!!」

キリッとした顔で叫んだヴァッカリオの口にアポロニオは慌てて飛びついた。小さな両手で自分の頭上にある口を塞ぐ。しばらく、往生際悪くもごもごしていたヴァッカリオが諦めて大人しくなったのを確認してからゆっくりと手を離した。

「ちょっとぐらいいいじゃん」
「ちょっともダメだろ完全アウトだろ」
「そうかなあ。プライベート空間だからわいせつ物陳列罪にはならないし」
「お前は兄をわいせつ物にしたいのか??」
「したい」
「即答するな。私だってお前をわいせつ物にしたい思いはあるがすでにわいせつ物だから困っているんだぞ」
「えっおいらわいせつ物なの歩く陳列罪じゃん」

アポロニオはため息をついて、端末を操作してゴミ箱寝太郎の写真を表示した。上半身はインナーのみ、下半身は股間が見えそうなほどにズボンがずり下がっている。

「陳列罪だ」
「いや歩いてない寝てるだけだしセーフ」
「こんなに卑猥なオーラを撒き散らしておいて何を言っているんだ?全身モザイクをかけてもいやらしい姿じゃないかむしろモザイクのせいで余計に猥雑になる」
「お兄ちゃん何言ってんの頭大丈夫??病院行く???」
「お前に言われたくはないのだが?」

アポロニオは端末をしまいながら、ヴァッカリオに嫌そうな顔を向けた。ヴァッカリオも嫌そうな顔をしてアポロニオを見る。

「お互いをわいせつ物にしたいとか頭がおかしいのでは?」
「性格も特性も正反対な兄弟のはずなのにどうしてこんなとこだけ似ちゃったかな??」
「待て、お前のその特殊性癖と私の盗撮癖を一緒にしないで欲しい」
「えっ、おいらの40代男性である兄に女児用スクール水着を着せておしっこを目の前でお漏らししてもらう性癖を特殊扱いするの!?」
「だから具体的な内容を口に出すな!!」

また口を塞がれそうになったヴァッカリオはアポロニオの両手をひょい、と避けた。それから、呆れた声で言う。

「盗撮の方が犯罪じゃん。おいらのはプライベート空間だから犯罪じゃないもん」
「ぐぬぬ……」

悔しそうに歯噛みするアポロニオを勝ち誇った顔でヴァッカリオが見下ろす。犯罪ではないが特殊性癖であることは間違いないのでは?とアポロニオは抵抗しようとするが、ヴァッカリオが自信満々にスクール水着を差し出してきた。

「さあ観念して着替えて!」
「それとこれは話が違うぞ!?」

ぐぐぐ、と押し付けられるスクール水着を押し返す。ヴァッカリオも負けじとアポロニオに押し付ける。男二人、30代と40代の兄弟の間でスクール水着が行ったり来たりする。

「お兄ちゃんより先に逝く弟のお願いなんだって!」
「だから手段を考えろ!泣くぞ!」
「それズルくない!?」
「切り札は使ってこそ切り札だ!」

くっ、とヴァッカリオは顔を顰めると、押し付ける力を緩めた。

「……仕方ない、おいらの負けだ。今日のところは引き下がろう」
「一生引き下がっていてくれ」
「だがしかし、このディオニソスXII、最強の名に恥じぬよう必ずや目的は達成してみせる」
「完全に育て方を間違えたクリュメノス助けてくれ」

かくして、アポロニオの嘆きを試合終了の合図としてこの日の攻防は終わりを告げた。

後日、人を疑うことを知らないアポロニオに不意打ちを仕掛けたヴァッカリオが無事に目的を達成したので読者各位は安心してほしい。

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