2022年3~6月Web拍手お礼まとめ - 1/10

ついに2年目に突入してタイトルがかぶるようになってしまったので年数を。GA2021の内容までの各種ヴァカアポです。だいたいコメディ。


 

汚くて古いフライパンをお兄ちゃんが使ってたからいい加減新しいのにしなよって適当な安物買ってきたら、お兄ちゃんがずっとうっとりとそのフライパン眺めててもっといいやつ買えばよかった、ってヴァがうぐぐってなる話

休日の昼下がり、リビングでニコニコ……もとい、ニマニマと頬を緩めて新品のフライパンを眺めているアポロニオがいた。そしてそれを眺めているヴァッカリオもいた。平和な休日の昼下がりである。

「んふふふ……」
「……お兄ちゃん、変な笑い声が漏れてるよ」

ヴァッカリオの声に気づかず、アポロニオはまだ変な笑い声をもらして、肩を震わせていた。

そんな兄の姿に、ヴァッカリオはため息をつく。そのフライパンは、安物で下手したら使い捨てにもできるぐらいだというのに。

事の発端はヴァッカリオの「なんとなく」だ。なんとなく、帰宅途中にデパートによって、酒を、と思う前にふとフライパンが目に入って、「あーそういやお兄ちゃんのフライパンもうボロボロだったな」と思って、なんとなくそのフライパンをひょいとレジに持って行って、なんとなくそのまま会計して帰ってきたのだ。酒は買うのを忘れた。

そのフライパンをアポロニオに押し付けるように渡したのが、昨日の話。その時はアポロニオも大いに喜んでくれて、ヴァッカリオも買ってよかったな、と思っただけだったのだが。

ところが、昨晩のテンションの高さそのままに今日の昼までずっとフライパンを眺めている。もちろん家事はちゃんとやってくれているが(ヴァッカリオは何もしていないのに偉そうに……)、それでも暇さえあればフライパンを眺めている。

「お兄ちゃん」
「……ふふふ……」
「お兄ちゃん! ねえ、お兄ちゃんってば!!」
「はっ! な、なんだ、呼んだか?」
「さっきから何回も呼んでるじゃん」

ヴァッカリオはいい年したおじさんであるのに、唇を尖らせて、いかにも拗ねてます、というポーズをとった。その途端、アポロニオは慌ててヴァッカリオのそばに寄ってきて顔を覗き込む。

「すまなかった、呼ばれているのに気づかなくて」

まるでヴァッカリオの機嫌を取るかのように謝るアポロニオを見て、ヴァッカリオも溜飲を下げた。というより、そこまで顔色をうかがわせるつもりはなかったので、少しばかり自分の心の狭さに嫌気がさす。拗ねた顔から一転ヴァッカリオは朗らかな笑みを浮かべた。

「ごめん、冗談冗談、怒ってないって」
「なんだ、驚かさないでくれないか」
「せっかくの休みなのに、お兄ちゃんが構ってくれないから寂しくなっちゃってさ~」

近寄ってきてくれたアポロニオをひょい、と抱き上げるとアポロニオはおとなしく、ヴァッカリオの膝の上に収まる。そんなアポロニオに甘えるようにヴァッカリオが頭を擦り付けると、アポロニオの小さな手がよしよし、と撫でてくれた。アポロニオの体の温かさと、ほんのり漂ってくる謎の甘い香りに、ヴァッカリオもようやく機嫌を直した。自分で買ってきたフライパンに嫉妬するなんて情けないとは思うが、それだけアポロニオが魅力的なのだから仕方ないことだと思いたい。

「すまなかった、寂しがらせたな。お前が買ってきてくれたフライパンだと思うと、ついうれしくなってしまって……」
「えー、そんな安物……お兄ちゃんがあまりにもボロボロなフライパン使ってたからさあ」
「安物だなんて! お前が買ってきてくれたというだけで、私にとっては世界一のフライパンだよ。一生の宝物にしよう」

キラキラと目を輝かせながら胸を張るその姿に、「嘘」は感じられない。アポロニオは、嘘も隠し事も苦手な男だから。つまり、有言実行でこのフライパンをアポロニオは一生大切にしてくれるだろう。

「う……だったら、もっと高くていいヤツ買えば良かった」
「ハッハッハ、気にすることはないぞ!」
「いやいや、おいらにも男のプライドがね?」

アポロニオの頭にぐりぐりと顎を押し付けて、特徴的な頭頂部の髪の毛が自分の鼻の穴にプスプス刺さるのをヴァッカリオは楽しむ。頭一つ下で、少しばかり窮屈な体勢をしているアポロニオだが黙ってヴァッカリオの遊びを許していた。いくつになっても、どれだけ大きくなっても、やっぱりヴァッカリオは可愛い弟で、こうして甘えてくる仕草が可愛くてたまらないのだ。

「んー、じゃあ今度、もう一つフライパン買いに行こうよ。フライパン2つあったらあったで、お兄ちゃんなら使い分けできるでしょ?」
「む、そのような無駄遣いは必要ないぞ。1つあればじゅうぶん……」
「無駄遣いじゃないって」

ヴァッカリオは膝の上のアポロニオを抱え直して、向かい合わせる形にした。きょとん、とした顔をするアポロニオが面白くて、ゆるく抱きしめながら顔にキスの雨を降らせる。

「だってこれから二人分の料理ずっと作ってくれるんでしょ? フライパンの消費だって、二倍になるんだからさ」

アポロニオが何かを言う前に、ヴァッカリオは小さな唇に軽く吸い付いた。何回か角度を変えて吸い付いていると、おずおずとアポロニオの両手がヴァッカリオの背中に回される。それに満足したヴァッカリオはようやくキスラッシュをストップした。

「……ヴァッカリオのいうとおりだ。私は、これからたくさんお前の分も料理を作るつもりなのだからな」
「でしょ? でさ、お兄ちゃんが作ってくれるなら、おいらだってその料理器具くらいは協力させてよ」
「二人の共同作業か? 作業するのは私だけだが」

茶化すようにアポロニオは言って、目を細める。それでも浮かんだ笑顔はヴァッカリオを慈しむようで、愛にあふれていて。

「そういうこと。だっておいら料理できないし。だめ?」
「だめじゃないさ」

甘えるような言い方をするヴァッカリオの甘えた態度に、アポロニオはさらに相好を崩して自分の頭より気づけばすっかり高い位置にあるようになった頭をもう一度何回も撫でてやった。

後日、高すぎる、と難色を示すアポロニオとこれぐらい余裕だって、と高級フライパンを買おうとするヴァッカリオの姿が百貨店にあったという。

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