GAお兄ちゃん編の幻を見ました

GAお兄ちゃん編の前(公開当日の15時台)に書いたお兄ちゃんの相互進化カードイラストをベースにしたヴァカアポ小ネタです。そういうわけでGAのネタバレは一切ありません!ないといったらない!笑


ある晴れた昼下がり。にこにこと卵焼きを差し出すアポロニオを前に、ヴァッカリオは何とも言えないひきつった顔をしていた。

ここはディオニソス区にある公園……といっても、子供向けの遊びまわる公園ではなく、史跡が存在する区立公園だ。ゆえに人もほとんどおらず、静まり返った公園をヴァッカリオとアポロニオはゆったりと散歩をしていた。ピクニック、というほどでもないが、重なった休みをどう消費しようか、といったところで外でのんびりしようという話になったわけだ。

二人は今、そんな公園の奥まったところにある、ちょっとした休憩所に来ていた。テーブルを挟んで座ったところで、アポロニオがいそいそとリュックから手作り弁当を取り出し。広げられた弁当から、ひとつ、卵焼きをピックでとってヴァッカリオに差し出してきたのだ。

「ほら、ヴァッカリオ、あーん」
「は、ははは……あ、あーん……」

……アポロニオの背後からギラつく視線が飛んでくるのをヴァッカリオは必死に無視して、アポロニオが差し出してきた卵焼きを口に入れた。うん、甘い。以前、アポロン区の公園で食べた弁当と同等レベルに甘い。

「前は、お前に食べさせてもらったからな。今度は私が食べさせてやろう」
「アア、ソウダネ……そういやそんなこともあったなあ、懐かしい。でもお兄ちゃん、お詫びの弁当でもないのになんで……ええと、ゴッドナンバーズ弁当を?」

アポロニオが手に持っているのは、ゴッドナンバーズを模した卵焼きがぎっしりと詰め込まれた巨大弁当。そう、前回の弁当の2倍以上はあろうかという特盛サイズだ。もはや弁当ではなく、重箱といっても過言ではない。

「お前の快気祝いと、ゴッドナンバーズが勢揃いしたことの祝いだ! せっかく、円卓の間に全員がそろうことができたのだから……」

そこまで言って、アポロニオは少しだけ苦笑いをしながらエウブレナ――ハデスIVの卵焼きに目を落とした。全員が揃ったとはいえ、ハデスIVの代替わりについてはアポロニオも多少は思うところがあるのだろう。ヴァッカリオはアポロニオの弁当に手を伸ばす。ディオニソスXIIのエンブレムを模したピックをひょいとつまんで、口に運んだ。うん、これも甘い。

「アレス零も新しく加入した、新世代のゴッドナンバーズだね。まあでも、ネプトのおっさんもクリュメノスも寂しがるだろうし、今度、どっか出かけるときはその二人の分も作ってよ」
「そ、そうだな! 次があったら、他のゴッドナンバーズの分も作ろう。……お前がいなかった、10年の間に、アフロディテIXは何人も代替わりしたからな。きっと、知らない顔もあるだろう」
「……卵焼きが全部アフロディテIXになりそうだね」

過去のことも、話題に出せるようになった。思い出のアポロン区の公園で食べたあの日から、1年以上が経過して、その間にも本当にいろいろなことがあって。

ふとヴァッカリオが顔をあげれば、昔、神々が住んでいただろう神殿跡から白い鳩が飛び立っていくのが見える。にこやかに笑いながら、次のおかずを差し出してくるアポロニオの背景があまりにも神々しくて、そして穏やかで。

「いやあ、平和っていいね……あーん」

アポロニオが差し出した「ヴァッカリオの顔をした卵焼き」を口の中で転がしながら、ヴァッカリオはしみじみと思ったのだった。

「まあこれでストーカーがいなければもっと平和なんだけどなあ」
「? ストーカー?」
「うそでしょお兄ちゃん気づいてないのあんな子供のお遊戯みたいな木の仮装してるゴッドナンバーズに???」
「???」

この人大丈夫だろうか、とアポロニオは久々に兄の純真っぷりに震え上がった。市民に危機が及ばない限りはアポロニオの危機センサーは能力を一切発揮しないらしい。頼む、もう少し自分の身を大切にしてほしいし危機感を持ってほしい……!

ああ、いや、でも、とヴァッカリオは急に浮かんだ一つの答えに、ぶるりと背筋を震わせる。もしかして、自分がいるから……警戒が緩んでいるのではないか、と。ヴァッカリオがそばにいて、そしてヴァッカリオだけを見ているから、周囲のことなんて何も目に入ってないんじゃないか、と。

「いやあ、愛されちゃってゾクゾクしちゃうね!」
「?? よくわからないが……私はお前のことを深く愛しているぞ! この世で一番、愛している自信もある」
「うんうん、おいらもお兄ちゃんのこと愛してるよ、好き好き」

冗談めかしつつ、ヴァッカリオがウインクと投げキッスをすれば、アポロニオは照れたように頬を赤くしてふにゃりと笑った。自分が弟に対して好だの愛してるだの言うのは平気なのに、言われるとすぐにこれだ。これがまた、可愛らしくてヴァッカリオの雄としての部分を大いに刺激してくれる。

「……ところでさ、ゴッドナンバーズ弁当にお兄ちゃんがいないんだけど?」
「自分で自分を作るのもどうかと思って……」
「ふーん。じゃあ、実物をデザートで食べさせてもらおうかな?」
「デザート……? っ、ヴァッカリオっ……!」

食べかけの弁当を落とさないように、そっとテーブルの上に置かせる。そのまま身を乗り出してアポロニオの唇を――っと、背景の木に見せられるのはここまで。こっそり伸ばしていたネクタルで、木に扮した某ゴッドナンバーズをべしべしと叩く。ゴッドナンバーズだから、ネクタルで叩かれたぐらいでは動じないだろう。

「んんっ……!」
「っは……弁当完食したら、次はお兄ちゃんを完食するからね?」

何回か角度を変えて唇をむさぼった後に、ようやくヴァッカリオはアポロニオを解放した。耳の先まで真っ赤に染め上げたアポロニオが、弁当とピックを片手に固まっている。

ヴァッカリオの言葉の意味を、体をもって知ってしまったアポロニオはその後のランチの間も、ずっとそわそわと落ち着かず。食べ終わった後、そそくさと片付けて、もじもじとしながらそっとヴァッカリオの手をとって、ぎゅっと握り締めたのだった。

ちなみに翌日のアルテミスVIIIは目の下に隈をつくり、ヴァッカリオをものすごい形相で睨んでいたらしい。

※睨んでいたのは怒りではなく「昨晩はおたのしみでしたね???????????」の方です

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