ヴァカアポのイチャラブ(?)ギャグ。展開が乱暴なので何も考えずに読んでいただけるとまこと助かります……。
・元ネタ
今日のアポロニオ
相手を泣かせないと出られない部屋に閉じ込められる。相手に知られてはいけないらしく、何も知らない相手に、相手が傷つくだろうなと思う言葉を選んでぶつける。心が痛くてこっちが泣きそう。
#今日の二人はなにしてる #shindanmaker
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アポロニオが朝、目覚めた時、その体は完全に拘束されていて身動き一つできなかった。起床直後のぼんやりとした頭が一瞬で冴え、何が起こったかと周囲を確認しようとする。が、体は何かに固められたかのように動かすこともできず、ただ前の明滅するモニターを見ることしかできなかった。
「相手を泣かせないと出られません……?」
何のことだ、と声を張り上げても何も応答はなく、文字列だけが光を帯びている。そう、どこにいるのかもわからないが視界も暗闇に閉ざされており、何も様子はうかがえない。
アポロニオの様子を気にすることなく、モニターの文字列が流れる。
――あなたの状況を相手に知らせることはできません
――言葉だけで相手を泣かせてください
――我々はその際に発生する感情エネルギーを集めています
「何を身勝手な……!解放しろ!」
その言葉にはやり応答はなく。代わりに、モニターの文字列が消えて現れたのは、アポロニオの愛する弟、ヴァッカリオだった。向こうがどういう状況なのかはわからないが、穏やかな顔で何かを飲んでいることから自分と違ってリラックスしているということはわかる。それだけで、アポロニオは少しだけ安堵した。このような意味の分からない状況に置かれているのが自分だけで良かった。
だが、しかし、モニターに表示された指示に従うとすれば、アポロニオはこれからヴァッカリオを泣かせなければならない、それも言葉だけで。なぜそのようなことをやらないといけないのか、と唇を噛む。しかし、神器も起動しない、英雄庁にも通信が届かない、手詰まりの状況ではそれしか方法が無いように思えた。……アポロニオは気づいていないが、思考誘導処置は多少なりとも行われている。指示に従わなければならない、そうしなければ絶対にこの部屋から出られない、というように。
ヴァッカリオを泣かせる。それだけのことで、アポロニオの胸は張り裂けそうなほど痛みを訴えた。いや、そもそも、あの弟が泣く姿をこれまで見たことがあっただろうか?まずは、そこからだ。ヴァッカリオが泣くような話をしなければならない。
「ヴァッカリオが泣く……?」
独り、呟いて考えてみる。例えば、離別していた10年の間。ひどい言葉を投げかけ、何回も弟を傷つけた。それでも、彼はへらへらと笑っては受け流し、アポロニオの前で涙を流したことはなかった。もしかしたら後で泣いていたかもしれないが……そこまで考えたアポロニオは、それだけで涙を薄っすらと滲ませた。手が動けば滲んだ涙を拭うところだが、それも叶わない。
では、と考え直して他のネタを探ってみる。昔、いたずらをした時に叱ったら泣いたが、それはまた違うだろう。そもそも今のヴァッカリオは良くできた大人の人間で、そのようないたずらをすることもない。叱ったところで前述のとおり、へらへら笑って終わりだろう。それではダメなのだ。
「うう……ヴァッカリオが泣く言葉……私ばかりいつも泣いている……」
思い返せば、大人になってからアポロニオの方が涙脆くて、すぐヴァッカリオの前で泣いてしまっていた。ずるいよ、と言われることもあったし……思い出すだけで、やっぱりアポロニオは涙を滲ませるどころか、今度こそぽろぽろと泣き出してしまった。違う、逆だ、と心を叱咤して鼻をすすりながら、もう一度。
ヴァッカリオが嫌がりそうな言葉、とは何だろうか、といろいろ思い返してみる。ヴァッカリオはいつも優しく強い弟であったから、反抗期の時だってふてくされた態度は取ろうとも、アポロニオに対して強く出たことはなかった。弁当を受け取らずとも、朝の挨拶を無視しようとも、多少無断で外泊しようとも、家には帰ってきたし、なんだかんだいって誕生日にはプレゼントを用意してくれたし……。
「そうだ、あの時、私が散々に好きだ好きだと言っていたら嫌がっていたな……!」
ぐず、と鼻をすすったアポロニオが閃いた!と言わんばかりに声を上げた。そうだ、これまで長いことヴァッカリオと会話をいろいろしてきた中で、明確に拒否反応を示したことと言えば、アポロニオが好きだと愛情を注いだ時ぐらいだ。子供の頃は素直に受け入れてくれていたが、反抗期になってからは嫌がることが多くなったし、最近も「そういうのはやめようよ、もうおいら達大人なんだからさ」とやんわりと断られることが増えてきたように思う。
であれば、存分に好きと伝えれば良いのでは!?……これが、天下の大ヒーロー、アポロンVIがその素晴らしい頭脳ではじき出したこの部屋から抜け出すための方策であった……!!勝った!!!
すっかり涙も引っ込んで意気揚々とヴァッカリオに掛ける言葉を脳内で練るアポロニオ。それはもう、あまりそういう甘い言葉と無縁な彼が脳みそをフル回転させてとびっきりにヴァッカリオを泣かせるための「愛してる」言葉を一生懸命、考えてる。おお、意外と沸いてくるし、何より、それを考えるだけでも心がウキウキとしてくる、とアポロニオはフフフ、と笑いを零した。
――1分後に相手との対話を開始します
――あなたの健闘を祈ります
頭の中で何回もヴァッカリオへの言葉をシミュレートしているうちに、どうやら時間が来たようだ。モニターに表示された文字列を眺めたが、アポロニオは何も怯えることなくいつもの不遜なアポロンVIの態度で対話の開始を待った。
プツン、と変な電子音がして、ヴァッカリオの視線がきょろきょろとした後にアポロニオの方を向いた。
『あれ……お兄ちゃん?んん?ナニコレ……?』
「ヴァッカリオ、私の声は聞こえているか?」
うん、聞こえてるよ、と返すものの、ヴァッカリオは不思議そうな顔をしている。だけれども、それ以上の状況を追求しないのは、彼もまた思考誘導を受けているからだ。そうでなければ、今頃血相を変えて兄の状況を確認してから飛び出して行っただろう。
「実はだな、ヴァッカリオ……」
『うん?』
「その……私は……お、お前のことが好きなんだ!」
『……うん?知ってるよ?』
アポロンVI……もとい、アポロニオは初手で爆散した。あれほどまでに脳内でシミュレートして完全に一瞬で弟を泣かせて解放されて事情を説明しに行く予定だったのに、いざ口に出そうと思ったらなぜか恥ずかしさが込み上げてきて、ついどもってしまった。まことに自分が情けない、と天を仰ぐ。
「お、お前が思っている以上に、私は、お前のことを好きなんだ」
『あーうん、そうだね……』
ふ、とヴァッカリオの煮え切らない微妙な返事にアポロニオは多少我に帰った。やはりこの手の話題は、彼にとって地雷なようだ。いつもだったら何かしら歯切れのよい言葉をくれるのに、今は困ったように眉を寄せて会話を止めてしまっている。もう一度、深呼吸をしてアポロニオはシミュレートした言葉をちゃんと紡いだ。
「お前は困るかもしれないが、私はお前が本当に好きなんだ。もうどこにも行ってほしくないし、ずっと一緒にいてほしい。今でこそ離れて暮らしているが、できることなら一緒に暮らしたいし、またベッドで一緒に寝たい。この前の弁当のように手料理をたくさん食べてもらいたいし……」
『お兄ちゃん、そういうのはさあ、もうおいら達も大人なんだから、そんなベタベタする必要はないでしょ』
「それはそうだが……」
アポロニオはそう言われて言葉を噤んだ。いつもはこういう話になって、少し気まずくなってしまうことがほとんど。そして、弟が無理やり話題を変えて、うやむやになってしまう。だがしかし、とアポロニオはもう一度、自身に喝を入れて、再び口を開いた。
「お前は嫌がっても私はそうしたい。何しろ、私はお前のことを心の底から好きだし……あ、愛しているからな!兄弟としての関係以上に!!」
『はあ?』
ヴァッカリオから、いつもの明るさが消えた低い声で疑問符のついた返事がくる。それはアポロニオを怯えさせるのに十分な響きを持っていた。明らかに、ヴァッカリオは怒っている。いや怒らせるのではなく、相手を泣かせないといけないのだが、とアポロニオは頭を抱えた。それでも、ヴァッカリオを怒らせることができたのなら、もう少し踏み込めば何かしら感情の振れを出してくれるだろう、と判断する。
「お……お前は、気持ち悪いかもしれないが、私は、そこまでお前のことを愛しているのだぞ、ヴァッカリオ」
『……お兄ちゃんさ、それ本気で言ってるの?ねえ、おいらのことバカにしてるの?』
「バ、バカにしてるものか、私はいつでも本気だぞ!……本当に、お前のことを愛しているんだ」
ヴァッカリオに予想以上の拒否反応を示され、アポロニオは最後の方の言葉をごにょごにょと言うのが精いっぱいだった。また、泣きたくなってくる。愛しているのは間違いないし、そうやって口に出してみればアポロニオは本当にヴァッカリオのことが世界で一番好きなのだと改めて自覚した、自覚できた。そのうえで、ヴァッカリオにここまで拒絶されると、生まれたばかりの感情にひどい傷がついていくようだ。心に傷がついたことは多くあれど、赤ん坊のような柔らかい感情につけられた傷からは鮮血が迸り、とても痛い。こんな心の痛さは初めてだ。
『あのさあ、なんでそういうこと言うの?』
「それは……その……」
もちろん、今の部屋の状況は説明できないから、他の理由を考えなければいけない。イライラとした様子を隠さない、ヴァッカリオの鋭い視線にアポロニオは身をすくめた。体は動かせないから、視線だけを落として、アポロニオは考える、言い訳を。
「……お前が、また、いついなくなってしまうかわからないし、私は……伝えずにいられなかったんだ。すまない、お前には迷惑をかけてばかりで、いや、忘れてもらっても構わないしなかったことにしてもらっても良いのだが……い、今だけは、私の言葉を聞いてほしい」
『……』
「愛してるんだヴァッカリオ、途方もなく。どうしたらいいか、わからないぐらいに」
『……そういうの、ずるいでしょ』
顔を伏せてしまったヴァッカリオに、アポロニオはさきほどまでの混乱の波も引いて、今はただひたすら顔を青ざめるばかりだった。言いたいことを自分勝手に言って、ヴァッカリオに言葉を叩きつけて、本当にひどい兄だ。いくら伝えられない理由があるとは言え、許されることではない。きっと、部屋から解放されても明日からはまた離別の日々になるのだろう、と考えてしまい、アポロニオはまた涙をぽろぽろと零した。
「すまないヴァッカリオ、すまない……」
『謝るぐらいなら言わなければいいでしょ!?黙って心の中に置いとけばいいじゃん!』
「……すまない……」
何も言う言葉も見つからず、アポロニオは途方にくれてしまったし、ヴァッカリオは顔を伏せたままだ。モニター越しで肩を震わせる弟に今すぐ手を伸ばして、慰めてやりたいし「今までのは理由があって言わなければいけなかっただけだよ、全部嘘だよ」とすぐに真実を伝えたい。それはどちらも叶わないことで……ヴァッカリオが涙を流すまでは、到底、叶わないことで。いや、解放されたとしても今までの言葉を「全部嘘だ」と言うことは、もうアポロニオの中にある感情を自覚してしまった今、できやしないだろう。
『すまない、って謝ったら許されると思ってんの!?おいらが、ずっと、どんな気持ちでいたのか……!』
バッと顔を上げたヴァッカリオの頬に、一筋、涙が流れていった。
――感情エネルギーの回収を完了しました。
――目標達成です。お疲れ様でした。
「は?」
モニターが一瞬消え、明滅する文字列が表示される。耳障りなブザー音がしたと思ったら、アポロニオの体は拘束から解放され空中に放り出された。咄嗟のことで、受け身もとれず、目をつぶって衝撃に備える。
「うわああっ!?」
「っ!?」
想像していたような衝撃はなく、むしろ、聞き覚えのある声とぬくもりを下に感じて、アポロニオは目を見開いた。
「ヴァ、ヴァッカリオ……!」
「お兄ちゃん!?えっどこから!?」
「こ、これには深いわけがあってだな……!いやまてどこだここは、お前の部屋か?」
「おいらの部屋だよ……って言うか、さっきの話!お兄ちゃん、また泣いてるし、ずるいよ、なんであんなこと言ったの」
ヴァッカリオの上に馬乗りになったまま、両手首を掴まれてアポロニオはヴァッカリオの真剣な目に貫かれた。いろいろ、理由はあれども、何から説明したら良いか全くわからないし……恐らく、ヴァッカリオが聞きたいのは、そういう「言い訳」などではないのだ、とアポロニオは気づいてしまった。
何を言葉にするべきか迷って、迷いに迷って、アポロニオは結局、言葉ではなくてヴァッカリオの唇に自分の唇を近づけた。至近距離で二人の濡れた視線が交わる。ヴァッカリオの金の瞳はやはり、いつ見てもきれいだった。
「キスをしたいのだが……許してもらえるだろうか?」
「……そういうとこだよ、お兄ちゃん。許しなんて聞かなくてもわかるでしょ」
ヴァッカリオの両手がアポロニオの手首から離され、背中に回される。ぐす、と二人そろって一度だけ鼻を鳴らすと、ゆっくりとキスをした。
涙の味がしたけれど、それはとても幸せなコトの始まりだと感じさせてくれるものだった。
■■■以下、同じ診断メーカーでまたしても同じ結果を引いてしまったオマケ■■■
またか。アポロニオはがっくりと頭を垂れた。見覚えのある感覚に見覚えのあるモニター。おかしい、ミッションクリアしたはずだったのに……!
指示の内容も同じだし、モニターにはやっぱりヴァッカリオが映っている。……昨日、気持ちを通じ合わせてそのままなだれ込むようにして愛を確かめ合った翌日にまたこれ。むにゃむにゃと眠るヴァッカリオの可愛い顔が愛らしい。うっかりアポロニオは現実逃避してしまったが、そういうことをしている場合ではない。
どうする、この前の展開は使えないぞ、どうするまたヴァッカリオを泣かすのか……!?アポロニオは本当に心の中で頭を抱えた。どうするんだこれ、と遠い目をする。しかし、時間は無情にも過ぎていく。またヴァッカリオが嫌がるようなことを、と考えに考え抜いた、頭脳明晰なアポロニオが出した答えは……。
「ヴァ、ヴァッカリオ!」
『うえ、なに!?そんな大声でどうしたのさ……』
「実は、私は、SMにとっても興味があってだな!!気持ちの悪いほどのドMなんだ!!!!」
『……は?』
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