ステイホーム!楽しい開発一週間計画!@7日目

ヴァカアポ。クソギャグ。もう明日が仕事なので、二人とも何もヤりません。これにて一週間の生活もおしまい!ここまで読んでしまった人、お疲れさまでした。二人の性生活に幸あれ!!


「い゛っっっっっっ!!!!」
「お兄ちゃん!!!」

風呂に入ろうとして浴槽の前でお湯を浴びたアポロニオは信じられない場所から走った信じられないほどの激痛に信じられないような大声で悲鳴を上げて、その場で固まった。
アポロンVIとしてそれなりにケガはしているし、痛みにも慣れているはず……だが、この痛みは信じられない、死ぬ。アポロニオはシンプルにそう思った。

そして弟に抱きかかえられて風呂から脱出し、ベッドで毛布を被ってべそをかいたこの事件が昨晩のこと。
昨日はついに本懐を成し遂げて、満足した心持ちで午睡を二人で行い、それから風呂でさっぱりして夕飯を……という予定だったが、このせいでいろいろと狂った。

結局、風呂に入る気にもシャワーを浴びる気にもならなかったアポロニオは、ヴァッカリオに赤ちゃんのごとく扱われて、優しくお尻を拭いてもらう羽目になった。まさか、何十年の時を経て立場が逆転するとは……少し、苦々しく思いながらアポロニオはいろいろとあきらめた。なんかもう急に疲れ果てて、全部放り投げた。20年分ぐらい歳をとった気分だ、気分はもう還暦だ。

そんなアポロニオをヴァッカリオは壊れ物でも扱うかのようにそっと汗を拭ったり、軟膏を塗ってやったり、いろいろと散々にお世話した。なるほど、兄があれはどうだこれはどうだと甲斐甲斐しくお世話したがる気持ちがわかったかもしれない。アポロニオはそのまま二食飛ばして優しいヴァッカリオの腕の中で眠りについた。

夜が明けた今、なんだか昨日より痛みを増したような尻を背負いながら、アポロニオはキッチンに立っている。
今日の朝ごはんは、ほうれん草とベーコンのエッグココットだ。さすがに昨日の朝から何も食べていない胃が匂いに反応してぐうぐうと音を立てる。

 

<b>7日目:一緒にお風呂に入る</b>

 

「あ、お兄ちゃんおはよう……体もう大丈夫?」
「いや……情けないが、大丈夫ではない。正直、座ると死にそうになる。穴だけでなく、股関節も痛いし腰も痛い……」
「そっか……でも熱は下がったのかな?」

ヴァッカリオが立ったままホットミルクを飲むアポロニオの額に手を当てて一人頷く。

「熱?」
「うん、昨日の夜に熱出してさ、結構苦しそうだったんだよ」
「そうなのか……すまない、迷惑をかけたな」

気にしないで、とヴァッカリオは笑うと立っているアポロニオを手招きした。そして、自分が椅子に座ると少しだけ膝の間を開けて、そこに兄を誘う。嫌そうな顔を一瞬だけしつつも、大人しく座るアポロニオ……だが、ヴァッカリオの膝の間にちょうど一番痛いところが乗るようにすれば、あの激痛発生震源地が空中に浮いていて痛くないということがわかった。

さすがヴァッカリオだ、賢い!とアポロニオは改めて弟に惚れ直していた。これだけで惚れ直すので、アポロニオの中のハードルは誰でも飛び越えられそうなほど低い。まあ、ヴァッカリオ専用ハードルなのだけれども。

「切れ痔用のドーナツクッションとか買っておけばよかったね」
「き、切れ痔……それはそうだが……」
「ごめん、言い方が良くない……ええっと」
「いや、事実だから仕方あるまい。出血はしていないと思ったのだが、この痛みは完全に切れているな……あと、中だけでなく外側も相当、擦傷ができているみたいだ」

アポロニオは持っていたホットミルクのカップをテーブルに置くと、ヴァッカリオの胸に頭を預けた。可愛く甘えてくれるようになったなあ、とヴァッカリオは一週間の成果をしみじみと思い返す。
はい、あーんとアポロニオの口にエッグココットをすくって差し出せば、ヒナの様に口をぱくりと開けてスプーンを招き入れた。

「っていうか、お兄ちゃんだからこそ出血しないで済んだ、って感じじゃない?普通の人だったらさ……」

そう言ったあとにヴァッカリオは言葉を詰まらせたし、アポロニオも死にそうな顔をした。……普通の肉体だったら、間違いなく大惨事だった。アポロニオは寝込むことになっただろうし、ヴァッカリオもトラウマになっただろう。

「うーん、お兄ちゃんどうする?明日仕事行けそう?」
「さすがに大丈夫だ。この程度の傷、明日の朝までには治るだろう」

キリッとした顔で言い放った後に、かなり小さい声で「たぶん」と付け加えたのをヴァッカリオは聞き逃さなかった。
だが、あのアポロンVIが病欠するとなるとめんどくさいアポロンフォースが騒ぐだろうし、場合によっては週刊誌も騒ぎだすし、さらにマズい場合は英雄庁からも指導が入る可能性がある。ヒーロー活動に支障をきたすような行動は控えるように、とか。新婚早々にセックスレスな生活とか勘弁願いたい。

「ヴァッカリオも明日からはヴァンガードベースに出勤なのだろう?私のことは気にしなくても大丈夫だぞ」
「そうだけどさあ、やっぱ、おいらが原因だし……」
「何を言うか、お前がいろいろ準備をしてちゃんとやってくれたから……その、目的も果たせたわけだ。お前に感謝こそすれ、原因だと悪く言うことはないよ」
「お兄ちゃ~~ん!!」

アポロニオの頭に頬ずりするヴァッカリオ。その可愛い甘えたな弟の頭に手を伸ばしてよしよしと撫でるアポロニオの手つきは優しい。止まったヴァッカリオの手からスプーンを取ると、今度はアポロニオがヴァッカリオの口にエッグココットを運んだ。大きな口が一口でスプーン上の料理をぺろりとたいいらげる。

「でも、また熱とか上がってきたり、なんか困ったことあったらすぐに呼んでよ?我慢しないでよ?」
「わかってるさ。……お前に、甘えていくことも、楽しいものだしな」

ふふふ、と笑うアポロニオに、ヴァッカリオも少し照れ臭くなりながらも笑って応えた。

朝食を片付けて、他愛ない会話をしながらニュースを見る。謎のウイルス騒動は無事に鎮静化に向かっており、予定通り本日の12時に外出禁止令は解除されるようだ。
やれやれ、と思いながらも、おかげさまでずいぶんとオイシイ思いをさせてもらったな、とヴァッカリオは思ったし、実はアポロニオも心の中でちょっぴり思っていた。

お暇する前に、とヴァッカリオがキッチンを掃除するのに合わせて、アポロニオもその背後で床をモップ掛けする。正直、座っているよりゆっくりとしたスピードで動いている方がまだマシかもしれない。昨日、寝すぎて変な筋肉が凝っているのもある。

「そういえば、お前は今週、酒を飲んでいないのだな」
「あー……買ってくるの忘れちゃってさ」
「……本当は、私に遠慮したのではないか?休みの日であれば、別に飲んでも構わないのだぞ」
「いやあ、そうは言うけど……だってお兄ちゃん、酒くさい相手とキスしたいと思う?」

その言葉にアポロニオはきょとん、とした顔をして小首を傾げた。

「別にヴァッカリオなら酒臭くてもキスしたいぞ?」
「そういうとこだよお兄ちゃんほんとさあああああ!!」

うぐぐぐぐ、と負け犬のような唸り声をあげたヴァッカリオは、傾いた兄の顔に合わせて自分も顔を傾けると唇を合わせた。今日はもう、ディープキスはせずに軽く合わせるだけで済ませる。少しだけアポロニオが物欲しそうな顔をしたが、だからそういう顔ほんと止まらなくなるからやめて、とヴァッカリオはすぐに兄の顔から目線を反らした。

だがしかし、その想いは微妙に兄に届かなかったようだ。何かを閃いた!と言わんばかりに顔を輝かせたアポロニオが、ヴァッカリオを追い詰める一言を放った。

「そうだ、掃除が終わったら一緒に風呂に入らないか?お前も帰る前にさっぱりしていけば良いだろう」
「ふ、ふろ!」
「だめか?」
「だめじゃないですはいよろこんでー」

アポロニオがヴァッカリオのしょぼくれた顔に弱いように、ヴァッカリオもアポロニオの、このちょっと眉を下げてヴァッカリオの顔色を窺うように聞いてくる「だめか?」に非常に弱いのだ。
甘えてくれと胸を叩いたものの、自分の理性が吹き飛ばない範囲にしてほしい、とは思う。思うのだけれども、全く通じないし、たくさん作ったバリケードも兄は容易く突破してくるので怖い。アポロン神の神話還りの怪力を舐めてはいけない。

良かった、とるんるん気分で掃除を再開する兄の後姿を見ながらヴァッカリオは……まあ、兄が楽しそうならいいか、とふわり微笑んだ。

「し゛み゛る゛……」
「もー……なのになんで風呂入ろうなんて言ったのさ……」

案の定、ひどいダミ声で叫んだアポロニオは、ぐ、と唇を噛み締めて涙をたたえながらヴァッカリオを見た。

「……昨日よりはマシだ」
「やせ我慢では?」

ううう、と呻くアポロニオだったが、昨日よりマシ、との言葉どおりにぎこちなくも体をスポンジで洗い、浴槽へと沈んでいった。アポロニオに何かあったら、と待っていたヴァッカリオをもさっさと体を清めて、アポロニオを膝の上に乗せた。すっかり定位置になりつつある。
本当に、兄の部屋付きの風呂が広くて良かった。ヴァッカリオの長身でも足を十分に伸ばせるというのは本当にありがたい。

「あ゛ー……痛いな、しみるな」
「はいはい。お風呂あがったらまた軟膏塗ってあげるから」
「うう……助かる」

少し老けたようにげっそりとするアポロニオ。ヴァッカリオはその頭を撫でてやりつつ、少し老けたぐらいでもまだ実年齢には追い付かないよな、とぼんやり思った。

「……ヴァカリオは、いつ帰る?」
「んーお風呂から上がったら、かな。……寂しい?」

アポロニオは顔を上げて、やっぱり困ったような顔をすると大人しく「寂しい」とヴァッカリオに告げた。少し前なら下半身にクる、と言いたいところだが今はストレートに胸に刺さる。

「おいらも寂しいなあ……帰りたくないって気持ちもあるんだけど」
「しかし、帰らねば仕事に支障がでるからな」

アポロニオはすっかり、「こっちに住んでいるとヴァンガード勤務が難しくなる」と思い込んでいる。正直、普段から仕事をしていないヴァッカリオだからそんなことはさっぱりないのだけど。でも、いろいろ考えたとき(例えば兄と相性最悪のどっかの店長とか)、やはりヴァッカリオがこちらに住み込む、というのは難しいのだ。だって、万が一、ヤツが暴れ出したら今度こそヴァッカリオは被害が出る前に刺し違えてでも止めなければならない。そのための、監視員だ。

そのことはアポロニオには一切伝えていない。英雄庁のトップシークレットということもあるし、隠し事ができないアポロンVIにプロメトリックが生きている、なんて明らかにすることはできない。何より、ヴァッカリオが常に死と隣り合わせ、それもアポロニオが思っている以上に死との境界があいまいな生活をしていることは、とても伝えられることではない。

そこまで考えて、ヴァッカリオは、あーあ、また隠し事しちゃってるなあ、と深いため息をついた。いつか、これも言える日がくれば良いのだけれども。今度、またエリュマの経営に貢献でもしておくか、と頭をかくにとどめておいた。

「ヴァッカリオ?」
「ん、いや、なんでもないよ。ヴァンガードの通信端末、電源切りっぱなしだから今週の仕事溜まってるかもなあって」
「はあ!?おい、お前、それでいいのか!?てっきり、私はお前が一週間休みになったのか、パトロールがないから家でゴロゴロしているのかと……」
「大丈夫大丈夫、書類仕事はエウブレナがやってくれているはずだからさあ」

大丈夫なのか、本当に??と不審そうな顔をするアポロニオをアレコレ、あることないこと言って煙に巻いた。まあ、実際、ヴァッカリオの主な業務はどっかの誰かの監視とパトロール程度なので、今週は暇であるというのは間違いない。エリュマも休業中の今、あのフリーターはおそらく英雄庁預かりになっているはずだ。そのまま、ずっと大人しくしていて欲しい。

「また週末に来るからさ」
「そうだな……週末が待ち遠しく思うのも、ずいぶんと久しぶりな気がする」

こういう約束をすれば、アポロニオもしっかり休みを取ってくれるのか、とヴァッカリオは今更気が付いた。これは英雄庁やアポロンフォースの面々に感謝されるべきでは??と一人、胸を張る。誰も見ていないが。

「もちろん、週末以外でも何かあったらすぐ寄るよ」
「何もないことを願っていてくれ」

たしかに、とヴァッカリオが言うと、二人は肩を揺らして笑った。それはそうだ、アポロニオに何かあったら困る。会いたいとワガママを言ってくれる程度なら可愛いものだけど、ケガをしたから来てくれなんてことになったら、ヴァッカリオの元々短い寿命がもっと縮んでしまう。

そろそろ出ようか、とどちらともなく浴槽から立ち上がり、この一週間、二人で入りまくった風呂場を後にした。寝室と、ここの風呂場に滞在していた時間が一番長かったかもしれない。
アポロニオは短髪だからさっと乾くが、ヴァッカリオの長髪は乾くまでにそこそこ時間がかかる。兄が乾かしてやろう、とブラッシングしながら優しく乾かしてくれる。本当に、ずっと昔の子供の頃を思い出した。懐かしくて、ヴァッカリオもやっぱり帰りたくないな、と鼻の奥がツンとなった。

「じゃあ、また週末に」
「ああ、気を付けて帰れ。酒はほどほどに、変なウイルスなんか拾ったりするなよ?」
「わかってるって」

口やかましい兄の言葉も、今なら素直に聞ける。本当に心配してくれていて、暖かい言葉なんだ、とわかる。

「お兄ちゃんも体には気を付けて」
「ああ。今日も、明日も大人しくしていることにする」
「それがいいよ」

このままだといつまで経っても玄関から踏み出せないな、と思って、ヴァッカリオは兄の小さな体を抱きしめた。アポロニオも、ヴァッカリオの逞しい背中に腕を回してぎゅっと抱きしめる。お互いの体温が、じんわりと移りあって、少しの悲しさと寂しさを紛らわせてくれるようだ。

「よし、お兄ちゃん成分充電した!帰る!」
「なんだその成分は……一週間頑張れよ、ヴァッカリオ」
「うん。お兄ちゃんも一週間、頑張ってね」

最後に、サヨナラのキスを交わして本当に、一週間の終わり。
とても楽しくて、幸せな時間だった。

手を振る兄に手を振り返して、ヴァッカリオは玄関から出て行った。ドアが閉じられる音に、本当に涙がこぼれそうになる。また週末に、と言っても、やはり別れは寂しいものだ。……どぢらも、これが最後の別れになるかもしれない生活を送っているのだ。

いやいや、とヴァッカリオは頭を振って歩きだした。5日会えないぐらいでべそべそ泣いていては、これから先の人生どうしようもない。まだまだ自分たちは生きていくのだから。
二人で一緒にいる時間はもっとたくさんあるはずだ。それに、もう会うことを我慢しなくてもいい。
……10年我慢したことに比べれば、たかが5日程度、大したことではない。

「でも、お兄ちゃんのご飯、しばらく食べられないんだもんなあ……」

そうぼやきながら、ヴァッカリオは外出禁止令明けの、少し浮足立った市街地を歩いて帰った。家に帰る前にその辺のスーパーによって、弁当と、酒を買い込んで。
そう思っていたけど、やっぱりお兄ちゃんにお弁当作ってもらえばよかったな、と自分の計画の甘さを嘆いた。

日中の明るい日差しを感じるのも久々だ。兄と二人きりの世界は本当に幸福に満ちていて、とても甘くて、一度食べたら忘れられない、あまりにも中毒性のあるものだった。
あの味を覚えてしまって、果たして自宅で独り、塩を舐めながら酒を飲むことができるのか?

ヴァッカリオはたった一週間で変わってしまったかもしれない自分に、少し戦慄を覚えながら、自宅へと急ぐのだった。
早く、自宅について、兄に「ちゃんと帰宅したよ」とメッセージを送らなければならない。もうヴァッカリオも子供でもないのに、まだアポロニオはちゃんと帰れただろうか?と心配していることだろう。
それを思い浮かべたら、ヴァッカリオの滲んだ涙も引っ込んだ。離れていても、兄のことを思うだけで心は温かくなるし、足取りも軽くなる。

そうだ、今度の週末は酒を持って行くのも良いかもしれない。兄と一緒に酒を飲んだのは、自分が成人になったとき以来だ。それから、以前テイクアウトでお世話になった店のプリンを持って行くのもいいかも……。
アポロニオが言っていたとおり、週末がもう待ち遠しくて仕方ない!

こんなにも世界は晴れていて、とてもバラ色に満ちている、そういうことをこの一週間でヴァッカリオはたくさん兄に教えてもらった。たくさんのことを教えてもらったと思っていたけど、まだまだ、大切なことを教えてもらえる。

やっぱり、お兄ちゃんには敵わないな、ヴァッカリオは改めて思って、暖かい日差しを与える真昼の太陽を見上げた。とても、美しかった。

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