なんか拍手のお礼にしようと思ってだらだら書いてたら予想以上に長くなったので普通に投稿。タイトルの通りですが、もしこれから実装されるGAヴァが「可愛い系」だったら……のヴァカアポです。きっと裏でこういうことがあったんだよ的な。
※お兄ちゃんキャラ崩壊注意
※ギャグです(ノリ的には本編終了後のポンコツ兄バカネタ)
英雄庁広報室。英雄庁の活動広報ポスターの打ち合わせに訪れていたアポロニオはテーブルの上に広げられたゴッドナンバーズ達の写真に目を通し、そして1枚の写真でピシリと固まった。震える指先で、サンプルのカラーコピーを手に取る。
「こ、これは……」
アポロニオの声に気づいた広報担当がぱっと顔を輝かせて、大変に明るい声で答えた。
「ディオニソスXII様の写真ですね! 十年振りに快く写真撮影にご協力頂けまして!」
「そ、そうなのか」
「我々としても最強と名高いディオニソスXII様の写真を久々に撮影できるとあって、ついつい張り切ってしまいましたよ! どうです、アポロンVI様や先代ポセイドンII様とも違う『男らしいヒーロー』のカッコよさに溢れているでしょう? できれば、ゼウスI様にもそういった写真撮影にご協力頂きたかったのですが、何分、自由気ままな方でこれまでアポイントメントが取れた事がなくて――」
関を切ったようにしゃべり始める広報担当の愚痴半分、撮影技術の自慢半分な話をアポロニオは聞き流し、ディオニソスXIIの写真に釘付けになっていた。
ザグレウスを地面に突き立て、柄に両手を置きこちらを睨みつつも、不敵な笑みを浮かべた顔。ディオニソスXIIから溢れる威圧感を表すかのように、ふわりと広げられた背後のマント。アポロンVIやアフロディテIXの様な正統派ヒーロー達と異なり、全体的に暗みがかかった色彩、その中で一等美しく輝く、ディオニソスXIIだけに許されし二重月桂冠。
「……だめだ」
「――何とか父娘ポスターも……え、アポロンVI様、何かおっしゃいましたか?」
「だめだ」
「え?」
「この写真は、だめだ! 却下だ!!」
「ええええっ!?!?!?」
広報担当は驚愕の声を上げたままに椅子を蹴り飛ばして立ち上がった。なぜだ、広報室の全力を使った珠玉の一品だ、その写真は。ヒーローに優劣をつけるつもりはないが、それでもこのディオニソスXIIの写真は頭一つ抜けて出来が良い。間違いなく、人々は足を止めこの写真に見入るだろう、心を動かされるだろう。
そんな自慢の写真が、アポロンVIに却下されてしまった! 広報担当は驚いた表情のまま、固まっている。しばらく、部屋に沈黙が続く。
何とか声を上げたのは、広報担当の方だった。恐る恐る、アポロンVIに「却下理由」を尋ねる。
「そ、それは……」
「それは……?」
「その……」
「つまり……?」
ごくり、と広報担当が生唾を飲み込む音が響く。アポロンVIがもったいぶったように、理由を言い淀んでいる。もしかしたら、何かゴッドナンバーズの機密が写っていて、口に出せないのかもしれない……いや、その辺はきっちり上司監督のもと精査をしたはずだ……ぐるぐる、頭の中で却下の理由を想定しては異議を唱えられるだけの根拠を並べ立てていく。アポロンVIの鶴の一声とはいえ、これだけの素晴らしい写真をお蔵入りにするには忍びない。
「つまり……カッコよすぎるのではないか……」
「カッコよすぎて却下……え?」
「これは……カッコよすぎて、街道に貼りだすのは危険ではないかと……思うのだが……」
「カッコよすぎて……」
「カッコよすぎる」
広報担当はもう一度言葉を咀嚼した。アポロンVI様が顔をほんのり赤めながら言った却下の理由、「カッコよすぎる」……なるほど。なるほど、わからん。
……とはいえ、大量にクエスチョンマークを飛ばすのが9割、残り1割はわかる、と頷きもしていた。確かに、この写真は広報室すら興奮の坩堝に叩き込んだ歴代最高とも言える出来具合。誰もが足を止め、写真に見入る出来具合……そこまで考えて、広報担当は急に納得していた。
「ああ、なるほど、写真の出来が良すぎて……市民が撮影等に押し寄せて、通行の妨げになるのではないかと」
「!! そ、そうだ! それに近い……カッコよすぎて危ない……」
「カッコよすぎて危ない」
「命危険……そう思わないか……」
「危険……いえ、そこまででは……いやでもそうかな……そうかもしれない……」
アポロンVIが両手を組んで机の上に置き、非常に緊迫した面持ちで「命危険」と告げてきた。そう言われてみればそう言う気がしてきた。この時、広報担当がもう一人いたら、まだなんとかなったかもしれない。しかし、一人ではアポロンVIのヒーロー・オブ・ヒーローズのオーラに敵うわけもなく。
広報担当は目を渦巻き状にぐるぐるとさせながら、何となくこの写真は危険なのかな、と思い始めた。そう言われてみれば、出来上がった写真を広報室内で展開したときに何名か(主に女性が)胸を押さえて息苦しそうに呻いていたことがあったような。アポロンVI様が危険と言うほどなのだから、きっと危険なのではないだろうか……だってあのアポロンVI様だし……なんかアポロンVI様も苦しそうだし……。おめめぐるぐる。
「し、しかし、そうなると、代わりの写真がですね……」
「それなら安心するといい、ディオニソスXIIの写真なら私からいくらでも提供しよう!」
アポロンVIが急に元気になって立ち上がった。広報担当は少しだけ引いたが、アポロンVIとディオニソスXIIが血のつながった兄弟であるということを思い出して、それなら良いオフショットがあるかもしれない、とむしろ食いついた。復帰したディオニソスXIIの話題は、今やオリュンポリスで最も関心の高いニュースなのだ。
「ぜひ! 見せてください、検討します!」
「任せてくれ! 早速、先日、エリュシオンマートのごみ箱で寝ていた写真だが……」
「ごみ箱!?!?!?!?」
初手から思っていたものと違う写真を提示された広報担当のパニックが加速する!!
「なーんでこの写真になったんだよ! 最初はあのいい感じの写真だったじゃん!」
完成稿として回覧されたポスターの写真、ディオニソスXIIの分は「春うららかな公園の芝生の上で寝転がって猫と戯れるディオニソスXII」になっていた。それを見たヴァッカリオは思わず資料を執務机にベシィッ!と叩きつける。
「だいたい、いつの写真だよ! こんな写真撮られた覚えはないぞ!」
「それは去年の春のものだ! 私が木の上に登って隠し撮りしておいたのだ!」
「お兄ちゃん!?!? どこから!?!?」
「ここだ!」
その声と共に、ヴァッカリオの足ににゅっと手が伸びてきた。そのままぐいぐいと押され、キャスター付き執務椅子をごろごろとヴァッカリオごとどかし、執務机の下からアポロニオが現れた。
「なんでそんなところに!」
「お前の仕事ぶりを見ようと思ってな! 安心しろ、今日は有休をとってある!」
「そういう問題じゃないよね!?!?」
「そうだろうか? お前の部下に声を掛けたら『ぜひ仕事ぶりを見てやってください!』と嬉しそうに執務室に通してくれたぞ?」
「あの野郎裏切ったな」
ツッコミどころしかない兄の行動はとりあえずもうどうしようもないのでスルーするとして、勝手に参観日を設定した部下の顔を脳裏に浮かべて後でボコる、とヴァッカリオはキレ気味に思った。
「どうだ、親しみやすいディオニソスXIIの姿として素晴らしいポスターではないか」
「ええ……正直さあ、ディオニソスXIIに親しみやすさとかいらなくない? どっちかっつったら、ヴィラン予備軍がビビッて犯罪を起こさなくなるような『犯罪抑止力』があるポスターの方が良かったでしょ?」
「だがな、あの写真では少し……」
「少し、なに? っていうか、あの写真、もしかしてお兄ちゃんが却下したの? おいら結構気に入ってたんだけど」
不貞腐れたようにヴァッカリオが唇を尖らせる。もちろん、アポロニオに抗議する意味での意図的なとんがり唇だ。理論派アポロニオに正面切って正論を叩きつけるより、弟の権限を最大に使っていった方が早いし、何より、アポロニオを傷つけなくて済む。
「う……きゃ、却下したのは私だが……」
「だからなんでって」
「……お、お前が! カッコよすぎるから!」
「……へ?」
ボッと顔を真っ赤にしたアポロニオは、速やかに執務机の下に帰っていた。ヴァッカリオは椅子に座ったまま、机の下をのぞき込む。アポロニオは体育すわりをして顔を両膝に埋めながら、もごもご、言い立てている。なになに、とヴァッカリオは耳を澄ませてみた。
「あんなカッコよいポスターを貼りだしたら……お前に心を奪われる市民が続出するだろうし……写真に夢中になって人だかりができて通行の妨げになるだろうし……群衆で騒動が起きてしまうかもしれないし……」
ヴァッカリオはほうほうなるほど、とアポロニオのもごもごを一通り聞いてから、だらしなく顔を緩ませた。なんだ、そういうことか。
「お兄ちゃん、あの写真、カッコいいと思ったの?」
「もちろんだとも! あんなに素晴らしい写真、手元で大切に額に入れて飾りたいぐらいだ」
「で、自分の手元だけに置いて他人には見せたくないと?」
「そうだぞ! ……はっ、ちっ、違う、そういうわけではなくてだな……! いてっ」
勢い余らせて飛び出してしまった自分の発言をかき消そうと慌てたアポロニオは、執務机の下で立ち上がろうとしてしこたまに頭をぶつけてしまった。そんなアポロニオに、呆れつつも生温かい視線を送り、ヴァッカリオは手を差し伸べる。アポロニオは恥ずかしそうにしながらも、そのヴァッカリオの手を取って執務机の下から這い出てきた。
「お兄ちゃんがカッコいいと思ってくれたなら、レプリカとかじゃなくてちゃんと神器を起動してカメラマンの無茶ぶりに付き合ったかいがあったよ」
「う、うむ。素晴らしい出来上がりだったぞ」
「……それで、カッコ良すぎて独占したくなっちゃったお兄ちゃんも見れて、本当最高だね」
「!!」
「違うの? 独占したくなっちゃったんでしょ、おいらのこと」
ほら、とヴァッカリオはたんこぶが出来ていそうな場所を優しく撫でてやりながら、アポロニオの手を少し強めに引っ張った。バランスを崩したアポロニオが、椅子に座ったヴァッカリオの胸に飛び込んでくる。……が、アポロニオは驚きこそしたものの、赤い顔をさらに赤くさせてから大人しくヴァッカリオの胸に顔を埋めた。
そんな可愛らしい兄に我慢できず、ヴァッカリオはアポロニオの頭頂部に何回もキスを落とした。くすぐったそうに、アポロニオがヴァッカリオの腕の中でむずがる。
「すまない、ヴァッカリオ、私のわがままであの素晴らしい写真をお蔵入りにしてしまった……」
「あーいいっていいって。却下に同意したのも広報部でしょ? ……でも正直、あの写真は採用してほしくなかったかな……」
後半、ヴァッカリオは遠い目をしながら呟いた。もう完成稿として採用されたものをいまさらひっくり返すのも気が引ける。何より、先日にもう一度あった確認会を「どうせあの写真で決まりだろ」と勝手に決めつけてバックレた自分にも責任はあるのだ。まさか、あれだけ絶賛された写真が却下になってるとはヴァッカリオも思わなかったのだ。大人しく真面目に参加しておけばよかったと思ってももう遅い。
「私のコレクションの中でも、お前の優しさが詰まった素晴らしい写真だと思うのだが、ダメだったか?」
「ぐ……そう言われると弱い……! いいや、ダメじゃないよ、ヒーローには厳しさや強さだけじゃなくて、優しさも大切だと伝えてくれる仕上がりになっていてさすが広報部だね!!」
ヴァッカリオはヤケクソになりながら答えた。何しろ、ダメか? と目を潤ませながらアポロニオが自分の顔を見上げてきたら、ヴァッカリオはもう白旗を挙げるしかない。胸の中でしょんぼりとしていたアポロニオがヴァッカリオの同意を得られたことで見る間に元気を取り戻し、頭頂部の謎のアホ毛をピン!と立てた(え、髪の毛なのに動く……?)
「そうだろうそうだろう! 実に惚れ惚れする仕上がりだ。……ハッ! そう言えば私は、お前が働く姿を見学に来たのだった」
「ゲッ」
急に我に返ったアポロニオが、いそいそとヴァッカリオの腕の中から脱出していった。そして、椅子に座ったヴァッカリオの隣に立つと、キラキラとした眼差しを向ける。
「さあヴァッカリオ、私に気にせず仕事に精を出すといい!」
「せっかくの密室執務室に二人きりでいい感じになったかと思ったらこれかよ~」
ぐにゃり、と一度は椅子に体勢を崩したヴァッカリオだったが、アポロニオの期待に満ちた眼差しに背き続けることもできず。仕方ない、と背筋を伸ばして机に向き直り、書類仕事に励むことにした。
結局、部下の思惑通り、丸一日、ヴァッカリオは溜まった書類を片付け続けることになったという。
まあ正直、カッコいいヴァの写真があったらお兄ちゃんは嬉々として貼りだすと思うよ
お兄ちゃんは全世界の人々にヴァのカッコよさや強さを知ってほしいと思ってる同担大歓迎派だから
布教に余念がない
ヴァは同担拒否派だと思う
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