GA2021後半開始前まで。原稿紛失したりしたので再録ダブりとかあったり、欠けがあったりしたらすみません。改めていつも拍手してくださる方々、ありがとうございます!
お金持ちお兄ちゃんがヴァにとんでもないお年玉をあげるもののヴァがスパダリ力(?)を発揮してなんとか回避するお年玉事件のヴァカアポ。ギャグです。圧倒的ギャグ。
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「ヴァッカリオ、お年玉をあげよう」
元旦の朝からソファでごろごろしてるヴァッカリオのところに、ニコニコと笑みを浮かべたアポロニオがやってきた。その手には可愛らしい虎のイラストが描かれたポチ袋が収まっている。
「いやもうおいら大人だし」と断りかけたヴァッカリオだったが、貰えるもんなら貰っとこう精神とお兄ちゃんをがっかりさせたくはないブラコン精神を発揮して、嬉しそうに「やったー!」と声をあげて小さなポチ袋を受け取った。どうせ子供扱いするアポロニオのことだ、きっと子供のおもちゃが買えるかどうか程度の金が入っているだけだろう。
「ねえお兄ちゃん、中身見てもいい?」
「ああ、いいぞ!」
送り主の前で金を検めるのもどうかと思い、念のために確認をとったがやはりアポロニオはニコニコとしているだけだった。歪に膨らんだポチ袋の中からヴァッカリオは紙を取り出す。
「お年玉で何かおっかな~」
いかにも嬉しい、というオーラを出しながらお年玉を確認するヴァッカリオ。その視界に入ってきたのは――小切手の紙、だった。
「ブフッ!!!」
「ど、どうしたヴァッカリオ! 風邪か!? 体調不良か!?」
噴き出して咳き込んだヴァッカリオに、アポロニオが慌ててソファから立ち上がる。なんでもないよむせただけ、と言いながらヴァッカリオは救急車でも呼ぶ勢いのアポロニオを逆に宥める。必死に宥める。正月早々、兄の勘違いで救急搬送されたなんてとんだ醜聞だ。
何とか落ち着いたアポロニオに、飲み物をお願いしてからヴァッカリオは改めて小切手を眺めた。間違いない、本物だ。こども銀行ではなく、しっかりとアポロン区に本社があるメガバンクの名前が書かれている。
「お兄ちゃん……ええ……」
お年玉にしたとしてもとんでもないだろう。何しろ金額欄が空欄なのだから、ヴァッカリオが好きに金額を決められる。アポロニオの貯蓄なんて詳しくは知らないが、それこそ億単位はあるだろう。たとえ公務員といっても、ゴッドナンバーズとして長く君臨しているのだから、危険手当やその他もろもろががっつり支給されているだろうし、アポロニオ自身も倹約家で無駄遣いをしないはずだ。
「ほら、ヴァッカリオ、オレンジジュースだ」
「ありがと」
「どうした、そんな難しい顔をして……」
ブラックコーヒーが良かったな、とは思いつつも、キンキンに冷えたオレンジジュースをありがたく受け取る。心配そうにヴァッカリオの顔をうかがうアポロニオの顔をじとり、とヴァッカリオが見返す。
「お兄ちゃん、小切手なんてどうすんの……」
「む。ヴァッカリオももう子供ではないからな……やはり、それなりの金額が良いだろうと思って」
「そこは大人扱いするけどお年玉は渡すんだね!?」
「当たり前だろう! お前がいくつになったとしても、私にとっては弟なのだからな!」
いや、普通、兄弟でお年玉は渡さないんじゃ……と思ったが、よくよく昔を振り返ってみればアポロニオからお年玉を毎年貰っていたので、ヴァッカリオはその点についてはそっと棚に上げておいた。
「ヴァッカリオ、好きな金額を書くといい。あまり高額だと銀行から引き出すのに時間がかかるから、お兄ちゃんが確認して事前に銀行へ連絡しておいてあげよう」
「待ってお兄ちゃんどんな金額を想定しているのかな!?」
銀行に事前連絡が必要な金額ってなんだ。ヴァッカリオは改めて浮世離れしたアポロニオの顔をまじまじと見るとともに、この人って本当に一人暮らしできていたのだろうか、と心配になった。オレオレ詐欺とか引っ掛かりそう。
……後日、こっそり部下と一緒にオレオレ詐欺訓練としてアポロニオに仕掛けたところ、見事に引っかかったどころか犯人の要求する10倍の金を持って受け渡し場に訪れたという。ヴァッカリオが無事だとわかってからは犯人殲滅モードになってまた大変ではあったが。
それはとにかくとして、ヴァッカリオはムムム、とアポロニオの笑顔と白紙の小切手を交互に見た。今、新年早々に超難問を突き付けられている。何しろ、小切手を突き返せばアポロニオはがっかりするだろうし、かといって子供のような少額を書いてしまえば、きっとアポロニオは「それでは足りないだろう」と勝手にとんでもない高額な小切手を追加してくるだろう。どちらにしても怖い。
ヴァッカリオは「大人のヴァッカリオらしい金額でありつつ、弟のヴァッカリオらしいかわいい金額」をチョイスしなければならないのだ……! なぜ元旦の朝からこんなことで悩まなければならないのだろうか!
うーん、とヴァッカリオは考えた後に、そうだ、とサラサラとペンを走らせた。覗き込んでいたアポロニオの顔が途端に険しくなる。
「ヴァッカリオ、そんな少額でいいのか?」
「いいって、これで十分」
そう言いながらヴァッカリオは自分の端末を手元で操作して、目的のページをアポロニオの前に差し出す。ブックマークしておいて良かった、気になってたレストランの予約ページ。
「ここ、二人で行こうと思ってさ~。だから二人分のディナー代! ダメかな?」
「ダメではないが……それぐらいなら、私が普通に出すぞ?」
「お年玉で貰ったんだから結局お兄ちゃんに出してもらってるって事になるでしょ? ちょっと高いからさ、こーゆー臨時収入でもないとなかなか行く気にならなかったんだよね! お兄ちゃんのお年玉があって良かったなあ!」
首を捻るアポロニオを流すかのように、ヴァッカリオはすらすらと理由を述べた。お兄ちゃんのお年玉のおかげ、ということを全力でアピール! こうすれば、お年玉を用意したアポロニオとしても悪い気はしないだろう。
「ねえねえ、レストラン予約していい? いいかな? ここ、人気店だから早めに予約しないと埋まっちゃうよ」
「そ、そうなのか。わかった、空いている日はいつだ? スケジュールを調整しよう」
「やった! お兄ちゃんとディナーだ!」
嬉しいアピールを目の前でわかりやすくやってやれば、アポロニオの頭からはお年玉問題はポロリと落ちて、代わりにヴァッカリオとのディナー問題がストンと収まる。アポロニオお兄ちゃんの脳みそは、ヴァッカリオに関してはだいぶ残念な作りになっているのだ……。
後日、アポロニオはヴァッカリオと共にディナーを楽しみ、その場でさんざんに「お兄ちゃんのお年玉のおかげで美味しいステーキが食べれて幸せだなー!!」と言われたことでさらに鼻高々ご機嫌となったという。こうして、小切手お年玉事件は無事に幕を閉じたのだった。
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