たぶんオペホリまで、GA2022分は入ってないと思う。たぶん、きっと。
中途半端に書いてしまった!というわけで、ここだけ2作セットです。
・ディオアポ同人作家の夢男子お兄ちゃん
・ディオアポ限界オタクの夢(?)男子ヴァッカリオ
の2本立てギャグです。
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夢男子お兄ちゃんの夏コミ奮闘物語
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ゼウス事変も落ち着いた現在、アポロンVIが毎日のように定時帰りをし、土日は休日出勤をせずにしっかりと休み、そして何より有休を確実に消化しているというのは有名な話だ。
さて、そんなアポロンVIことアポロニオは特別会議もパトロールも予定されていなかった本日、休みを取っていた。そんな彼が休日に何をしているかといえば。
もっぱら、世間では溺愛している弟……ディオニソスXIIと仲睦まじく休日を過ごしていると噂だ。ところが。
「ふむ……」
アポロニオは一人、自宅内のデスクに向かっていた。目の前に広がるのは真っ白の紙。アポロニオの片手には鉛筆、もう片手には消しゴム。
少し悩んだそぶりを見せた後に、アポロニオはさらさらと紙に鉛筆を走らせた。紙の上を滑る鉛筆が描き出したのは……四角い、マス。いや、これはもう、漫画のコマと言って問題ないだろう。
さらにアポロニオはすらすらと鉛筆を走らせる。吹き出しを書き、人物を書き、背景のメモや擬音のメモなどなど。
そう、アポロニオが今、書いているのは漫画のネームだ。もうすぐ行われるオリュンポリス最大の同人誌即売会イベントに参加するための、新刊同人誌の。
ちなみにタイトルは『サマーラブシンドローム』だ。まあつまり。ゴリゴリの恋愛モノだ。うん。
アポロニオはさくさくとネームを進めていった。本編約60ページ。表紙やらなにやら込みで、64ページの漫画本。同人誌。恋愛同人誌。
一気にネームを書き上げたアポロニオは、もう一度、1ページ目から自分のネームを読み直していく。
「んん……このコマはもっと……」
消しては書き直し。主に繰り返しているのは、恋愛モノでは大変に重要なヒーローの顔だ。アポロニオは納得いくまで、何回も書き直す。
「ええい、もっと実物は美しい……!」
……実物。そう、アポロニオが扱っているのは、いわゆる、ナマモノというジャンルだ。実際の人物を対象にした、なかなか取り扱いの難しいジャンルである。アポロニオは描いたヒーローの顔について、もっと「美しく」「カッコいい」と呟きながら首をひねっている。
そうして彼が手を伸ばした「資料」には――ディオニソスXIIの写真がどっさりと収められていた。ディオニソスXIIの写真を集めたアルバムである。しかも、年数は今年のもの。
何を隠そう……いや何も隠せていないのだけれども。アポロニオが描いている恋愛同人誌の主人公、ヒーローはディオニソスXII、つまり実の弟のヴァッカリオであったのだ。
ディオニソスXIIといえば、昨年、10年の沈黙を破り公式に復帰を宣言したばかりだ。それから1年……アポロニオはディオニソスXIIの活躍を眺め続けてきた。ついでにストーカーばりに写真に収めまくってきた。ギリギリ職権乱用にならない範囲で。
そして、アポロニオは心に決めたのだ。今年の新刊は最新の情報で行くぞ、と。去年まではどうしても、10年前に僅かな時間現れただけのディオニソスXIIをモデルにせざるを得なかった。……いや、去年の冬はこっそりとジャスティスカーニバルバージョンのディオニソスXIIを採用していたが、それはとにかくとして。
せっかく、表に出てきたディオニソスXIIを取り扱えるのだから、アポロニオとて力が入る。なるべく本物に近くなるように、じっくりと資料の写真を眺め――あまりのハンサムっぷりにうっとりと頬を染めていた。ネームをやれ。
「はっ! いかん、写真に夢中になっている場合ではない」
頭を振ったアポロニオは鉛筆を握りなおして、ネームの修正に戻る。次のイベントに合わせるためには、今日の休みとこの週末でペン入れまでは終えたいところだ。
ネームをある程度終えたところで、アポロニオは休憩のために席を立った。ココアを入れて、ついでにイベントの申し込み用紙に目を通す。いつもと変わらない様式。ふむ、先に埋めてしまうか、とアポロニオはペンを手に取った。
さくさくと超トップシークレットであるはずのアポロンVIの個人情報を埋めていく。さらにジャンルは「ナマモノ」、サブジャンルは……「ディオニソスXII×アポロンVI」と。
そう!! もはや言うまでもなく!!
アポロニオは! 夢系BL同人作家だったのだ!!!
もうわけがわからない。
通称「ディオアポ」。男同士の恋愛を取り扱うものは、ボーイズラブである。しかしながら、アポロニオは「アポ」の方に自分を重ね……いや重ねるも何も本人なわけで、つまり第三者から見るとボーイズラブ作品でありながらも作者本人としては夢作品であるという何ともわけのわからない奇怪な状態になっていたのだ。
ちなみに、初参加時にディオアポで夢ジャンルに登録しようとしたところ、主催からジャンル移動の指示が出されたため、ボーイズラブジャンルに登録している。アポロニオ本人としては「キャラ×自分」なのだから夢ジャンルではないのだろうか? と首をかしげながらも、主催の言うことには素直に従って現在に至る。
「これでよし」
申し込み用紙に記入を終えたアポロニオはそれを封筒にしまった。ココアとお菓子のクッキーをつまみながら、印刷所のカタログをぺらぺらとめくる。今度の表紙はどの紙にしようか。せっかくの新刊なのだから、このオプションも良いかもしれない。
そうやって珍しいぐふぐふとした笑いを一通りした後、飲み終わったマグカップとクッキー皿を片付けてアポロニオは再度、机に向かった。こうして時間を置いてからネームを見直すことで、また良いアイデアも浮かんでくるというものだ。
「む、このコマのヴァッカリオの顔……もう少し、肩幅が必要だな」
顔のほうが大きすぎる、と呟きながらアポロニオはもう一度、人物の下書きをやり直す。ちなみに、アポロンVIに対してディオニソスXIIが壁ドンをしているシーンだ。
今日はネームまで、と決めたアポロニオはひたすらに微調整を行っていく。一番時間をかけたのは、水着姿のディオニソスXIIの筋肉だ。何回も描きなおして、納得のいくソフトマッチョに仕上げる。そう、夏の本だから。夏の本だから、この新刊のディオアポは水着なのだ。
「うむ、我ながら良いのではないだろうか」
満足そうに頷きつつ、それでいてクライマックスのキスシーンでは自分で描いておいて恥ずかしそうに原稿を眺める。
夏の特殊任務で二人きりになったディオニソスXIIとアポロンVIが、想いをすれ違わせながらも任務をこなしていく中で互いの気持ちに気づき……というあらすじの、恋愛同人誌。アポロニオにとっては夢同人誌なのだから、アポロニオの夢なのだ、この展開は。
誰もいない夕陽が煌めく浜辺で、ディオニソスXIIが低い声でアポロンVIに愛を告白し、そして強く抱きしめ、流れるようにキスを――
「はあ……今回も良い本が作れそうだ」
最後の確認として通しで読み終えたアポロニオは、うっとりと目を細めた。あの美しく賢く逞しく、それでいて優しさに満ちて男らしいヴァッカリオ……もとい、ディオニソスXIIが、自分を抱きしめて愛を囁き、唇を奪うのだ。考えるだけでもドキドキときめきが止まらない。妄想も止まらない。ノンストップだ!
「……き、肝試しにでかけたディオニソスXIIとのデートというのもいいな……」
……無限にネタがわいてくる。いやさすがに、新刊二冊は厳しい。肝試しのネタは無配漫画にしよう、とアポロニオは決めて、今日の分の片づけをするのだった。
無事にアポロニオの新刊は発行され、イベント当日には長蛇の列ができたという。ディオアポ島最大手の壁サークルには、ボランティアのスタッフが1日中張り付いて列をさばき……サークル主は途中で売り子に任せて、ディオアポ本を買いあさりに旅だったらしい……。
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ディオアポ本を買いあさっているヴァッカリオの話
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ヴァッカリオはじ、と一冊の同人誌を目の前にして難しい顔をしていた。同人誌のタイトルは「サマーラブシンドローム」。ディオニソスXII×アポロンVIの、全年齢向け漫画本だ。なんと驚きの本編60P、さらに無配の肝試しデート編の小冊子もついている。
そんな大ボリュームの同人誌を読み終えたヴァッカリオは良質なディオアポを摂取したことで胸いっぱい……になると同時に、妙にリアルで解像度が高すぎるディオニソスXIIやアポロンVIの振る舞いに不審な点を感じていた。
それは例えば、任務中の英雄庁とのやり取りであったり、戦闘中の二人のやり取りであったり、二人の武装であったり、だ。
「これ、関係者が描いてねえだろうな……」
関係者どころかド本人なのだが、通販一辺倒のヴァッカリオは知る由もない。
この同人誌を発行しているサークルの主はSNSもやっていなければ作品投稿サイトに作品を投稿することもない。淡々と同人誌だけを発行しており、他のユーザーとも一切交流をしていない、謎の人物だ。
ヴァッカリオも一度は顔を拝んでみたいと思う神絵師様なのだが……さすがに、長身のヴァッカリオがイベント会場に、しかもBL島に行くのは目立ちすぎる。今となっては、ディオニソスXIIとしても顔割れしてしまっているのだから、ますます行き辛い。
まさか兄が素顔そのままどころかアポロンVI時と変わらないいつもの服装で参加しているとは夢にも思わないヴァッカリオだ。そんなまさかばかな。本人セルフコスプレである。
「だがなあ、かといって、英雄庁に持ち込むのも……」
調査はしたいが、調査をしてこの作家の筆を折らせるわけにはいかない。ディオアポ界隈最大手、しかもヴァッカリオのハートを鷲掴みにしてくるピュア恋愛作家なのだ。これは大切に保護したい。
とにかく、この作家の描くアポロンVIは可愛いのだ。弱弱しかったり、自分に自信がなかったり。他のディオアポ本だと、どうしてもツンと澄ました怖いアポロンVIの方が主流なのだが、この作家のアポロンVIは違う。
「はあ……今回も可愛かったな……」
ヤバそうな藪蛇は置いておいて。ヴァッカリオはもう一度、同人誌を開く。戦闘中、窮地に陥ったアポロンVIをディオニソスXIIが助けに入るシーンだ。ディオニソスXIIの美化っぷりが恐ろしいのは目をつぶっておく。
ディオニソスXIIに助けられたアポロンVIが、目を丸くして顔を赤らめながら小さな声で「助かった、ありがとう」というシーンがヴァッカリオはお気に入りだ。最初に読んでいて、こっそりガッツポーズをとってしまうぐらいには。
そりゃあヴァッカリオだってリアルでやってみたい。アポロニオの目の前で、最高にカッコつけた状態で登場し、アポロニオの目をハートにさせてみたい。
が、残念なことに、現在のオリュンポリスは平和に輪をかけて平和で、ヴァッカリオが念のために、と駆けつける頃にはすでにアポロンVIの手によって事件は解決しているのだ。ついでに、よく来てくれたな! と輝かしい笑顔で迎え入れられ、最終的には寄り道をせずに真っすぐ帰るのだぞ、と子供のお遣いのごとく頭をなで繰り回されて送り出されてしまう。
「いやあ、平和はいいことなんだけどねえ」
ぱたん、と同人誌を閉じたヴァッカリオは小さくため息をついた。現実はなかなか難しい。
二人そろって同じものを夢見るBL系夢男子なのに、すれ違いまくっている。さっさとどちらかが種明かしをしてしまえば、あっさり解消されそうなものだが……?
しかし、オタクのガードは固い。絆は固い。この同人誌の作者がアポロンVI本人であることをヴァッカリオが知りえることはないだろう。……万が一にも、会場に出向かない限りは。
ヴァッカリオは同人誌を自分の鍵付きクローゼットの奥にしまう。そして、代わりに……ディオアポの18禁同人誌を数冊取り出してきた……!!
「あのサークル、お兄ちゃんを可愛く描いてくれるんだから18禁本も出して欲しいんだけどな~」
なぜかあのサークルは全年齢向けしか出さない。そういうサークルもあるとはわかっているのだが……。いや、時折、あとがきや無配ペーパーでは18禁に興味がありそうなメッセージを残している。
今度、18禁本のリクエストでも出してみようか、と思いながら、ヴァッカリオは18禁ディオアポ本を開くのだった。
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18禁本のリクエストをされてしまったお兄ちゃんはどうなるのか!?
兄の部屋から原稿を発見してしまうヴァッカリオ!?
ヴァッカリオの部屋を掃除中に自分の同人誌を見つけてしまうお兄ちゃん!?
つづ……かない
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