8月分Web拍手お礼SSまとめ - 10/10

秘蔵のAVコレクションがお兄ちゃんに見つかってしまい、ロリコンショタコン疑惑を持たれてしまうヴァッカリオ大ピンチ!なヴァカアポ(なんかこの手のAVネタ何回も書き過ぎてるのか妄想ネタだけにとどめてるのかツイートしてるだけなのか全部わからなくなってきたけどご勘弁を……)


 

完全にただの事故であった。床に散らばったAVパッケージの数々を前に、ヴァッカリオもアポロニオも二の句を告げずに黙りこくっている。

アポロニオの粘り強い押しに、ついに根負けしたヴァッカリオが同居に向けて引っ越しの準備を進めていた本日。ヴァッカリオの部屋で、荷造りを手伝っていたアポロニオがクローゼットを開け、山となって積み重なっていた服を迂闊に引っ張り出したところ雪崩が発生し、頂上からヴァッカリオの秘蔵AVコレクションが降り注いで現在に至る。

不幸中の幸いだったのは、ヴァッカリオが遥か昔からコツコツと集めてきた「アポ□ンVI」関連のAVが無いことだろう。あれは、別の場所に保管してある。ヴァッカリオはサッと散らばったAVを確認してヤバそうなものがないことを確信してから危ねええええええ!と心の中でだけ叫んでいた。

「ヴァ、ヴァッカリオ……これは……」
「う……ま、まあ、おいらも男だし……」

ゼウス系統の神話還りだし、と小さな声でぼそぼそとヴァッカリオは言い訳を続けた。アポロニオはそれに対して特に何も言わず、動揺した態度のまま、足元のAVを拾う。

「『●学生スク水課外授業』、『ハメ好きっず』、『陸上部JCを性活指導』……」
「読み上げないでよ!?」
「ヴァッカリオお前……お前……」
「誤解! 誤解です! 違うから!!」

……誤解である。本当に、誤解である。断じて、ヴァッカリオはショタコンでもロリコンでもない。中学生以下の子供っぽい見た目のAVが揃っているのは、偶然……ではないがアポロニオが察してしまったような事ではない。

そう、ヴァッカリオはブラコンだ。ショタコンでもロリコンでもなく、ブラコンだ。アポロニオの事を性の対象として見て久しく、となればジェネリックお兄ちゃん!として似たような体型のつるぺたボディな小中学生がメインのAVばかりコレクションしてしまうのも致し方ない。

え?アポロニオお兄ちゃんは高校生ぐらいじゃないかって?AVの世界はさ、厳しいから……高校生って言葉に飛びついてフタを開けたら+10歳ぐらいの見た目とかざらにあるから……。だからヴァッカリオの主戦場が小中学生になったのは仕方が無いことなのだ。そう、真性のショタロリが好きなのではなくて、あくまでもお兄ちゃんを求めた結果が小中学生ゾーンなだけなのだ!!

などと言う言い訳をアポロニオ本人に言えるわけもなく。ヴァッカリオは必死に違う、誤解だ!と言い立てたが、アポロニオは次々とAVを拾い集めてはヴァッカリオの顔とパッケージを見比べて「うわあ……」と言った顔をする。

「ま、まあ、人の好みに文句はつけられないからな……犯罪に手を染めなければ、私から言う事は何もないからな」
「犯罪もしませんし、誤解だからね!?」
「ヴァッカリオ、そう自分の好みを恥じる事は無いのだぞ」
「恥じてるわけじゃないけど!」

ああ、どうしよう、話が通じない。アポロニオの中では完全にヴァッカリオはショタコンロリコンおじさんになってしまった。厄介なのは、アポロニオがどこかで弟大好きエピソードとして漏らす可能性がある、というただその一点。絶対に誰にも言わないでよね、と言ってしまえば、アポロニオはさらにヴァッカリオへの疑惑を確信に変えるだろうし、かといって野放しにするのも危険。

ヴァッカリオ最大のピンチ! 対ハデスIVよりピンチかもしれない!

頭を抱えるヴァッカリオを、アポロニオが不憫そうな視線で見やる。きっと、世界に誇る美丈夫で最高の男である弟の隠れた性癖に苦悩しているのだろう、と勝手に思っているに違いない。かなり各種性癖に寛容な時代になったとはいえ、アポロニオはどちらかと言えばまだ冷たい視線が多かった前時代的な感覚が身に染みついている。

「私達兄弟は性格も好みも正反対だからな……ヴァッカリオがそういった……その、小柄で幼少の者を好むのも致し方ないのかもしれない」
「幼少の者って言い方やめて????」

幼少ではない、ジェネリックお兄ちゃんの間違いだ。改めて否定しようとしてヴァッカリオはふと気が付いた。アポロニオは今、「私たちは正反対だから」と言っていた。つまり……つまり、アポロニオの好みは、これらのAVとは正反対、ということ。

「……お兄ちゃんの好みはおいらと正反対で、年上で大柄な人間、ってこと?」
「っ!? そ、それは……いや、そんな事は無い、ぞ」

ヴァッカリオが突っ込めば、アポロニオは今さら自分の失言に気づいたらしく、顔を赤くしてあからさまに狼狽えた。違う、と否定するが、その態度がアヤシイ。これは形勢逆転なるか?と思うと同時に、「年上」の部分がどうしてもヴァッカリオには引っ掛かる。年上が好み、と言われてしまえばヴァッカリオが何をどう努力しても、兄のお眼鏡に適う事はない。

「そっかあ、お兄ちゃん年上が好みかあ」
「それはない、それはないぞ。自分より年上などと……もう限られてしまうではないか。それに、年齢と中身はまた別物だろう」

ふーん、とヴァッカリオは拗ねたような相槌を打つが、アポロニオの落ち着いた言葉を聞く限り……アポロニオの言い訳は本当の事かもしれない。そもそも、嘘や隠し事が苦手なアポロニオだ。そんなわかりやすいアポロニオが慌てることなく冷静に対応できている、となれば、嘘ではない真実の可能性が高い。

「年上は別に好みの条件じゃない、って事は……自分より身長が高くて大柄な人間が好き、と」
「そっそれはっ! いやその……ち、違う……ぞ」

わかりやすかった。大変に、わかりやすかった。先ほどの「年上が好き?」談義とは打って変わって、アポロニオは顔を赤くして目をうろうろさせ、さらに言葉に詰まりながらヴァッカリオの質問に答えてくれる。これはもう間違いなく「身長が高くて大柄な人間が好き」というのは真実だろう。

ヴァッカリオは少し意外に思った。アポロニオとてとっくに成人した男性で、その好みが自分より大柄な人間とは。年頃の少女が夢を見るなら、わからないでもないが。面白くない気持ちを抱えつつ、アポロニオの好みに探りを入れる。

「えーっと? 好みが正反対だから……ああ、あれかな、髪の毛はショートよりロングの方が好き、と」
「べっ、別に、ロングが好きなわけではないぞ! ……まあ、確かに、ショートよりは……肩の下まであった方が、好み、では、ある……」

耳をすませていなければ聞こえないほどの小さな声で、アポロニオはぼそぼそと後半を付け加えた。へえ、お兄ちゃんはロングがお好き、と。ますます、へそを曲げてすっかり拗ねた気分のヴァッカリオだったが、ふとアポロニオの視線に気づく。アポロニオはヴァッカリオを見ているようで、少しだけ視線が外れている。どこを見ているのか、と思った瞬間、その視線の先が自分の肩あたり……ぼさぼさ髪の切り口に向いていることに気が付いた。

そこでヴァッカリオは改めてここまで出てきた新情報を整理する。アポロニオの好みは、「どちらかと言えば年上ではない」「長身で大柄な人間が好き」「髪の毛は肩の下ぐらいまであると良い」……ん? あれ? もしかして??

「ねーお兄ちゃん。好みのタイプは別に年上じゃなくてもいいんだよね? 年下とか好きなの?」
「と、年下……ま、まあ、私からすれば、大半の人間は年下になるからな。私より上となれば、もう生涯の伴侶を見つけた人間も多く……」
「はいはい。お兄ちゃんは年下が好き、と」
「!! ち、ちが……いや、違わないが……べ、べ、別にことさら年下が好きと言うわけでは……」

これはもう、「年下が好き」で決まりだろう。これだけわかりやすく動揺してくれるのなら。

「じゃあさ。ここに『年下』『大柄で長身』『そこそこロングヘア』な人間がいるんだけど?」

ヴァッカリオは自分を指さして、にんまりと笑って見せた。アポロニオはヴァッカリオの顔をまじまじと見て、そこから間の抜けた声を出して……顔を真っ赤にして絶叫した。

「は……はああぁっ!?!?」
「ちょ、お兄ちゃん、そんな……」
「っな、そんなわけっ……!! わ、私は、ヴァッカリオの事が、好きなわけではないぞっ! 偶然だっ! 偶然っ! 偶然んんっ!!!」

アポロニオは手に持っていたAVの山をヴァッカリオに押し付けるとダダダッと走り去ってしまった。まあ走り去ったところで狭いヴァッカリオのおんぼろアパートの一室、逃げ隠れる場所などほとんどないのだが。アポロニオのリュックも放置されたままだし。

「いやお兄ちゃん……わかりやすすぎでしょ……」

ヴァッカリオは耐えきれずにニマニマとした笑みを浮かべ、口元を手で覆った。あんな露骨に否定して……そう、これだから、アポロニオは嘘も隠し事も致命的に、へたくそ、なのだ。それがこんなに可愛い形で発露してくるとは。

アポロニオがいなくなった後、ヴァッカリオはいそいそと散らばったAVを片づけて段ボールに詰める。封をして、アポロニオにもう見られないように細心の注意を払って「開封は本人のみ」と大きく油性ペンで書き殴った。これでよし、と。

「おーいお兄ちゃん、引っ越しの手伝いしに来てくれたんじゃないのー?」

床にあぐらをかいたまま、アポロニオが消えた廊下に向かって大きく声をかける。まあ、壁の向こうからちょろちょろ白いジャケットの裾や、非常に特徴的な俗に言うアホ毛が見え隠れしているのだ。こちらの様子を伺っている兄がまるで小動物のようで、本当に可愛すぎて今すぐ撫でまわしたい。

ヴァッカリオ苦笑しながらそちらを見ていると、壁から顔を半分だけ出したアポロニオが恨めしそうにこちらを見てきた。その様子に噴き出すのを必死に我慢して、ヴァッカリオは「なに?」と声をかける。

「……私の好みは、違うからな。別に、ヴァッカリオの事は家族として、弟として可愛がっているだけだからな」
「はいはい、わかったわかった。そういう事にしといてあげるよ」
「偶然だと言っているだろう!」

顔を赤くしてぷすぷすと怒りの湯気を頭上から立ち上らせたアポロニオがやってくる。照れ隠し怒りモードのまま、まだぶつくさ文句を言いつつも手は引っ越しの荷造りにしっかりと動いているようだ。

「いやあ、これから同居生活、どうなることかねえ……楽しみ楽しみ」

アポロニオに聞かれないように、ヴァッカリオも小さく呟いて荷造りを再開するのだった。

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