ワイン造りの「ぶどうの足踏み」をお兄ちゃんにやってもらおうとするヴァカアポのギャグ(下品ネタ多いので苦手な方はご注意を)
—
※処女だのなんだのといった下品なネタなので苦手な方はご注意を。
ヴァッカリオは段ボール一杯のぶどうを抱えて帰宅した。
ディオニソス神と言えば豊穣の神であり、ぶどうであり、つまりワインなわけだ。そういうわけで、ディオニソスフォースが大量に仕入れて売店に並べているワインメーカーから「産地直送のぶどうをお裾分け」してもらい、その一部をありがたくヴァッカリオは持って帰ってきた。
ひょこり、と先に帰宅していたアポロニオが顔を出す。エプロンで手を拭きながら、玄関までやってきた。
「こんなにたくさんのぶどう、どうしたんだ?」
「ああ、取引先のワインメーカーからお裾分け、で貰ったんだよ」
「ほう! ……しかし、この量を二人で食べきるには難しいな……」
スイーツに使うにしても、量が多い、とアポロニオは顎に手を当てて考えている。
そんなアポロニオを置いて、ヴァッカリオはリビングにぶどうを運び入れた。そのまま、くるりと振りかえってアポロニオにニヤついた笑いを向ける。
「いやあ、このぶどうでワインでも作ろうかと思って……」
「ワイン?」
「そうそう。神器の力……っていうか、酒造りの神の力を使えば、ね」
「!」
アポロニオは驚いた顔をした後に、ぱあっと顔を輝かせた。
ヴァッカリオは、10年と少し。その間、ずっと体の都合で神器も、神話還りの力も使うことができなかった。それをアポロニオに打ち明けてからは、ヴァッカリオが有事の際に力を使おうとするだけでもアポロニオは取り乱して、命を削るヴァッカリオの姿に悲壮な表情で涙を浮かべたものだ。
それが、今や健康体になったヴァッカリオは自由に力を使うことができる。そう、こんなプライベートの、大したことないものにだって。
その素晴らしい現実に、アポロニオが興奮しないわけもない。不自由だったヴァッカリオが、自由に力を使えるという事実がアポロニオにとっては何よりもありがたき福音だったのだ。
「それでさ、ワインを作るにあたってお兄ちゃんにぶどう踏みやってもらいたいんだけど」
「ぶどう踏み……ああ、昔行われていた、穢れのない処女が行うという……」
そこまで言ってアポロニオは口を止めた。そのあと、ヴァッカリオを見上げて頬を赤く染めながら、「問題点」を指摘する。
「……私は、もう処女ではないのだが……」
……ヴァッカリオは、アポロニオの視界の外でぐっ!とこぶしを握った。きっと、こういう反応をしてくれるだろうとある程度予想はしていたが、本物を見ると改めて素晴らしいと思う。
二人はとっくにヤる事ヤってる仲で、アポロニオは男であってもとっくに非処女な非ピュアであったのだ。さきに、「私は男だぞ?」とツッコミを入れるかと思いきや、「処女ではない」の方が出てきたのだからいろんな意味でヴァッカリオはアポロニオの反応を拝んだ。素晴らしい。
「え、でも大丈夫だよ、お兄ちゃんなら処女じゃなくても純潔は守られているから」
「どういう理屈だ」
「あれじゃない、ほら、治癒能力高いから毎日処女膜再生して処女になってるんだよ」
「そんなわけあるか」
アポロニオはヴァッカリオが提唱した再生説を一刀両断した。そもそも、尻の中に処女膜なんてあるわけないだろう、とアポロニオは非常に真面目な顔でのたまってくれた。
ちぇ、とヴァッカリオが冗談半分に唇を尖らせていると、アポロニオが突然閃いた!と言わんばかりに手を打つ。そしてやや興奮しながらヴァッカリオを見上げた。
「むしろお前こそ処女だからぶどう踏みが――」
「いやおいら男だし」
ヴァッカリオはつばめ返しのごとく兄が提唱したヴァッカリオならできるよ説を一刀両断した。確かに後ろの純潔は守られているが、そもそも「処女」というカテゴリに自分を入れて欲しくない。処女かどうかが適用されるのはアポロニオだけなのだ。
「それもそうか。……いや待て、それなら私だって男なのだから根本的に対象外なのでは?」
おっと気づかれた。ヴァッカリオはひょい、と視線を逸らす。でも見たかったんだ、お兄ちゃんの白くて細い足でぶどう踏みするところを。まだ日焼けの痕が残ってるいやらしい生足でむぎゅむぎゅぶどうを踏むところを。
アポロニオはヴァッカリオの企みには気づかなかったが、どことなく不穏な空気を感じて、じとりと半目で弟を睨む。
「……まったく、一体何を企んでいるのか……。まあ、何にせよ本当にワインを作るならワイン樽が必要だな」
「あ、本当にワインにしていいの?」
思わず、ヴァッカリオはアポロニオの顔をうかがった。てっきり、ワインにするにはもったいないとでも言ってそのまま食べるか、何かスイーツの材料にでもなるのかと。
「もちろんだとも。お前が神器を自由に使う姿を見れるのだからな!」
「あ~~そっち~~」
これ、方向性は違うけど考えていることは同じだな?? とヴァッカリオは天を仰いだ。結局、二人ともワインは二の次で、ワインづくりにかこつけて相手の「好きな姿」を見たいだけである。やはり血は争えなかったのだ……。
後日、ディオニソスフォースからワイン樽を貰い受けた二人は、子供のように一緒にぶどう踏みをしてずいぶんとはしゃいだという。
出来上がったワインは、今日も二人の食卓を飾っている。
※コメントは最大500文字、5回まで送信できます