1&2月分Web拍手お礼SSまとめ - 8/10


残業ストレスで爆発したヴァッカリオがお兄ちゃんにめっちゃ甘えるヴァカアポ(ヴァカアポとは……??)


※ヴァッカリオが可愛い系、ショタぶるまいをするので苦手な方はご注意を

 

 

 


アポロニオが夕飯の支度を終えて、ヴァッカリオの帰りを今か今かと待っていた時。ようやく、玄関のほうから物音がした。

「おかえり、ヴァッカリオ……っ!?」

ぱたぱたとスリッパで出迎えにいけば、ものすごい勢いで玄関から弾丸のような巨体が飛んできて、アポロニオに飛びついた。とっさに、アポロニオは筋肉を軋ませて本気で踏ん張る。アポロニオでなかったら、押し倒されて後頭部を廊下の床に強打していただろう。

「お兄ちゃん~~~~~疲れた~~~~~~~!!!」

大砲の弾、もといヴァッカリオはアポロニオに抱き着いて全体重を自分より小柄なアポロニオに預けていた。ついでにアポロニオのさらさらとした金色の髪にたっぷりと頬ずりをする。すーはー深呼吸をして兄吸いもする。どんな時でもなぜか甘い匂いがしてくる兄の体臭と今日の夕飯の匂い。どうやらデミグラスソースのハンバーグのようだ。香りの中にハンバーグの肉汁を嗅ぎ分けたヴァッカリオはぐうと腹を鳴らした。

「おお、かわいそうに、最近残業続きだったからな……さあ、手洗いうがいをしてきなさい、夕飯の準備はできているよ」
「ええ~やだ~~お兄ちゃんと離れたくない~~~~」

アポロニオをぎゅうとぬいぐるみのごとく抱きしめてヴァッカリオはやだやだと地団駄を踏んだ。夕飯も食べたいがアポロニオも抱きしめていたい。そうしないとストレスで禿げてしまいそうだ。いいのかアポロニオは、ご自慢の弟がつるっぱげになってしまうぞ。

……禿げたとしてもアポロニオなら、いつもと変わらずヴァッカリオのことを褒め称えてくれそうだ。禿げても美丈夫だと。さすがにそんな未来はヴァッカリオとしてもごめん被りたいので、その嫌な未来予想図をヴァッカリオは破り捨てた。

「ヴァッカリオは甘えん坊だなあ。仕方ない、お兄ちゃんが一緒に洗面所まで行ってあげよう」

アポロニオは体をくるっと回して、ヴァッカリオをおんぶ……はできなかったから、背中にひっつけて洗面所へと赴いた。アポロニオの背後霊と化したヴァッカリオもべったりくっついたまま歩きにくそうにしながらも洗面所にたどり着く。

アポロニオはヴァッカリオの手を取って、自分の手ごと石鹸で泡立ててから一緒にぬるぬると洗ってくれた。絡まる指先、滑る手のひら、撫でられる手の甲。ぬるぬる。帰ってきて早々にお兄ちゃんと洗面所で手洗いプレイとは、とヴァッカリオは一瞬興奮したが今は疲れのほうが勝っていたのでヴァッカリオのヴァッカリオは何も反応を示さなかった。珍しく、本能より理性のほうが興奮している。

うがいもコップに水をいれてもらって渡される。せっかくだから口移しで水を渡してくれてもよかったのに、とヴァッカリオの理性は思った。

そうやって手洗いうがいを終わらせたヴァッカリオはアポロニオに手を引かれて食卓に座った。目の前に、予想通りのデミグラスソースのハンバーグが用意されていく。付け合わせはポテトサラダとオニオンスープ。サラダは別皿でどっさりと提供。パンは焼き立てプレーンパン。ヴァッカリオの腹がまたしてもぐうと鳴った。

「さあ、召し上がれ」
「……お兄ちゃん、食べさせて。もうおいら疲れたから腕も動かしたくなーい」

やだやだ、と椅子に座って器用にじたばたすると、アポロニオは目を丸くしたのちにふわりと微笑んだ。

「今日はずいぶんと甘えん坊だなあ。しょうがない、お兄ちゃんが食べさせてあげよう」

アポロニオがスプーンでオニオンスープをひとすくいして、ヴァッカリオの目の前でふぅふぅと息を吹きかけて冷ましてくれる。そして口元に差し出して、「はい、あーん」だ。ヴァッカリオが口を開くと、アポロニオはスプーンを差し入れてオニオンスープをヴァッカリオの口に落としていく。コンソメの塩気と、玉ねぎの甘さがじんわりと疲れた体に染み渡っていく。

「んーおいしー!」
「そうかそれはよかった! 次はメインのハンバーグを食べるか? それともポテトサラダにするか?」
「ハンバーグちょうだい」

わかった、と頷いてアポロニオはフォークで一口サイズに小さくちぎったハンバーグをヴァッカリオの口に優しく入れる。肉汁が口の中に広がり、肉がほろほろと溶けていく。デミグラスソースはやや甘味が強いかもしれないが、それでも肉の味とちょうど良いバランスだった。

「これもおいしー!」
「ふふふ、どれもヴァッカリオのためを思って作ったからな。おいしいと思ってもらえるなら、良かったよ」
「お兄ちゃん、次はポテサラがいい~~」
「はいはい」

アポロニオはにこにことした笑みを崩しもせず、むしろさらに深めてヴァッカリオの口にせっせと食事を運ぶのだった。

それだけではない、食事の合間にもヴァッカリオの愚痴をよくよく聞いてやり、頭を撫でてやり。食事が終わって片づけを済ませたら、ソファでまだぐずぐずしているヴァッカリオに膝枕をしてやって頭をまた撫で撫でと。

「ふふふ、こんなにお前が甘えてくるのも久しぶりだな」
「そうだよこんな忙しいことなんて滅多になくていいもん。えーん仕事行きたくなーい」
「む、それはいけないぞヴァッカリオ。今日は早く寝て、たっぷり休息をとるとよい。そうしたら、また明日も頑張れるな?」
「……うん、頑張る」

アポロニオにそう言われてしまっては。ヴァッカリオはアポロニオの腰に抱き着いて柔らかな腹に顔を埋めながらムスッとした声で言った。アポロニオお兄ちゃんはヴァッカリオのことをたくさん甘やかしてくれるが、厳しい時には厳しい人なのだ。仕方なくヴァッカリオはぐりぐりとアポロニオの腹に頭を押し付けて不満をアピールする。

アポロニオは少しだけ苦笑をすると、ヴァッカリオを一度引っぺがしてキッチンに消えていった。戻ってきたときには、皿いっぱいの山盛りドーナツが。

「明日、アポロンフォースに持っていこうと思って焼いたのだが。どうだ、デザートで食べないか?」
「食べる!」
「飲み物はココアにしようか」

もともと、甘いものが好きでないヴァッカリオだ。普段であればドーナツより塩辛いおつまみだろうし、ココアではなく酒だろう。でも、今日はとにかくアポロニオに甘えたい気分で、甘やかされたい気分で、そうなったら甘いドーナツとココアを食べて飲んでしたくなってしまったのだ。

「お兄ちゃん、ドーナツ食べさせて」
「ははは、しょうがない子だな。……そうだ、チョコレートソースをかけてもいいし、はちみつをかけてもいいぞ」

アポロニオはそう言いながら、ヴァッカリオをソファに座らせて、また「はい、あーん」と甲斐甲斐しくドーナツを口に運ぶ。一つを平らげた後にヴァッカリオがチョコレートソースを所望すれば、アポロニオはウキウキとした足取りでキッチンに取りに行ってくれる。

その後も風呂に入れてもらって、寝室でもベッドで添い寝と絵本の読み聞かせをやってもらって、ヴァッカリオはようやくおとなしく眠りに就いたのだった。

翌日の朝、ヴァッカリオはさっぱりとした顔をして出勤していく。あそこまでアポロニオに甘やかされたのだから、今日ぐらいは頑張らないといけない気がしてきた。

……それに、頑張ればもっとアポロニオにも甘やかしてもらえる。なんなら、夜のお願いだって全部聞いてもらえそうだ。ムフフ、とヴァッカリオは出勤する車の運転席でしまりのない笑みを浮かべる。

そう、昨晩は疲労のあまり沈黙していた本能が一晩明けたら復活してきてしまったのだ……! アポロニオの甘やかし夜バージョンがあると思えば、ヴァッカリオはどんな大量の仕事もこなすことができる。

よし、今日も頑張るぞ、とヴァッカリオは非常に晴れやか(ただし脳内は爛れまくり)な表情でディオニソスフォースに出勤したのだった。

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