ふわふわラテのノボリ旗を見たお兄ちゃんが「ふふラわわテ……?」ってなって噴き出しちゃうヴァのヴァカアポ(それはヴァカアポなのか??)
—
「ふふらわわて……?」
「ん、なに?」
突然、足を止めたアポロニオが道路わきの何かに気を取られてぽつりと呟いた。ヴァッカリオもつられて足を止める。
今、二人は久々の休日をのんびりと散策デートをして過ごしていた。今日はポセイドン区に足を延ばして、南国のフルーツスイーツを楽しんできたところだ。もちろん、ポセイドン区にあるオリュンポリス一の水族館もばっちり楽しんできた。さて、そろそろ帰ろうかと歩いている途中、アポロニオは何かを発見したらしい。
ヴァッカリオがアポロニオのつぶやいた謎の呪文を聞き返すと、アポロニオは一本のノボリ旗を指さした。なるほど、おいしそうなラテの写真が載っている。だからアポロニオは気になったのだろう、カフェがあるのではないかと。ラテがあるならケーキもある、甘いものがある。そのアポロニオのセンサーは間違っていないはずだ。
「いや、あの『ふふらわわて』とは何なのだろうと……」
「ふふらわわて……」
「私が知らないスイーツなのだろうか? ポセイドン区の名産だとしたら……すまない、少し気になってしまったのだ」
「え、いいよ、お兄ちゃんが気になったんならちょっと寄ってみようか?」
「しかし、今日はもうカフェでスイーツを楽しんだだろう」
あのマンゴーケーキは美味しかったな、とアポロニオは途端に顔をほころばせて、うっとりとした口調で言った。午前中に行ったポセイドン区の小さなカフェで頼んだマンゴーケーキのセットはアポロニオの舌を十分に満足させることができたらしい。アポロニオを楽しませるために、スイーツが有名なカフェを一生懸命に探したヴァッカリオも彼氏冥利に尽きるというもの。普段、あまり外食をしないアポロニオにとって、カフェというのはなかなかに新鮮だったようだ。
「まあ、せっかくポセイドン区まで来たんだし。いいじゃん、午後のおやつってことにすれば?」
「夕飯が入らなくなるぞ」
「甘いものは別腹って言うでしょ」
気になって目を止めておいて、いざ行こうとすれば急に渋りだすアポロニオ。1日に2つケーキを食べるのは贅沢が過ぎる、とでも思っているのだろう。清貧すぎだよ、とヴァッカリオは内心で苦笑しながら、少しばかり強引にアポロニオの手を引っ張って道の反対側へと渡った。
ところで。「ふふらわわて」とは何なのか。もうヴァッカリオは正体を見破っている。ノボリ旗に近づくにつれ、うきうきし始めるアポロニオを見ながら、ヴァッカリオは笑いをこらえるのに必死だった。
「ふふらわわて……この店のメニューか」
「そ、そうみたいだね……ぶふっ」
「メニュー表も店外に出ていないようだが……どうしたヴァッカリオ、先ほどから様子がおかしいぞ」
不審な動きをするヴァッカリオを見咎めたアポロニオが心配そうな声を上げた。ヴァッカリオは腹を抑えるようにして、その長身を折り曲げている。
「い、いや何でもない、大丈夫だよ……ところで、ふふらわわてって何かわかった?」
「情報が少なくて何も想像がつかん。写真はラテの様だが。これの名称なのだろうか」
「名称、名称ね、うん、だいたいあってる」
「……? ヴァッカリオは知っているのか? ふふらわわての事を?」
アポロニオが真剣な声でヴァッカリオに尋ねた。その様子に、ついに我慢できなくなったヴァッカリオは噴き出してしまう。いつまでもアポロニオを笑いの的にするのもよくないな、とヴァッカリオは道端のノボリ旗に手を伸ばした。風に揺られて読みづらくなっていた旗を引っ張ってピンと広げる。
「お兄ちゃん、ふふらわわて、じゃなくてね、『ふわふわラテ』だよこれ」
「ふわふわラテ……あっ!!」
ヴァッカリオにネタ晴らしをされたアポロニオは、ノボリ旗をじっと見た後に、声をあげた。途端、羞恥で耳まで真っ赤に染まる。
「風で巻かれて見づらかったからね、見間違えちゃったんだね」
「うっ、そ、それは……ううっ、どこからどう見てもふわふわラテと書いてある……」
写真もあるのだから気づかないほうがおかしいではないか、とアポロニオは恥ずかしそうに、それでいて自己嫌悪に満ちた口調で言った。おやおや、アポロニオお兄ちゃんはへそを曲げてしまいそうだ。ヴァッカリオは苦笑した後に、ノボリ旗を立てている店舗を指さす。
「そういうわけで、ふふらわわての正体もわかったし、カフェ寄っていこうよ。ここまで来たらおいらも飲みたくなってきちゃったなあ、ふふらわわて!」
ヴァッカリオが冗談めかして言えば、アポロニオは少しだけ剣呑な視線でヴァッカリオを見ていたが、そのあとにぷっとふきだした。
「そうだな、せっかく道路を横断してまで正体を確認しに来たのだから……味のほうも確認せねばな、ふふらわわての味を」
わざわざ「ふふらわわて」の部分を強調し、冗談めかして言ってやれば今度はヴァッカリオが声をあげて笑った。
店内に入った二人はメニュー表を開いては小さな声でぼそぼそと「これがふふらわわて……」と会話を交わし、実物が運ばれてきてからも「ふふらわわて美味しいぞ」「甘すぎないでいい感じだねこのふふらわわて」とクスクス笑いながら感想を言い合い、店員に奇妙な目で見られてしまったようだ。
周りの目が気にならないぐらい二人きりの世界で「ふふらわわて」を楽しんだらしい。
—
でもこの間違い方って横読みも縦読みもできる日本語ならではの間違い方だよなって書き終わった後に気が付きました
たぶんオリュンポリスは普通に英語文化だと思うので……(ライセンスカードその他がアルファベット&左読み)
※コメントは最大500文字、5回まで送信できます