2022年7~10月Web拍手お礼まとめ - 4/10

ヘタレヴァとつよつよお兄ちゃんの事後ヴァカアポ。短い。
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お兄ちゃん、そう甘えた声で呼ばれてアポロニオはゆるゆるとまぶたを開けた。目の前には眉尻を下げて申し訳なさそうな表情を浮かべた可愛い弟がいる。犬なら耳と尻尾をぺたりと伏せているだろうし、きゅうんと情けない声でもあげていそうだ。

そこまで思考をゆったり歩かせてから、アポロニオは苦笑した。力の入らない手をどうにか動かして手招きすると、いそいそとヴァッカリオが寄ってくる。

「ごめん、やりすぎた」

ストレートに謝るヴァッカリオに否を返そうとしたが、散々に声を張り上げ続けた喉は枯れ果てている。ひく、と喉を動かしただけで、ヴァッカリオはそれに気づいたらしい。慌てて、その長い腕を目一杯に伸ばしてサイドテーブルに置いてあったミネラルウォーターを取る。

「お兄ちゃん、水」

見ればわかる、とアポロニオは思う。まあつまり、指一本動かせないのだから、そうしたヴァッカリオには責任を取って飲ませてもらいたいところだ。

差し出されたミネラルウォーターのボトルを無視して、ヴァッカリオの顔に視線を飛ばした。途端、ヴァッカリオは少しだけ目を開いて、小さく頷く。
ボトルのフタを開けてミネラルウォーターを口に含んだヴァッカリオ。そのまま、アポロニオの体を抱え起こして口移しで水を飲ませた。

一度で足りない、とまたしてもアポロニオが視線で訴えれば、ヴァッカリオは甲斐甲斐しく、何回も水を口移しで飲ませてやる。さながら、雛鳥に餌を与える親鳥のようだ。

知らぬうちに子供は大きくなって巣立つ、とは言うが……まさか巣立ったあとに舞い戻ってきて、自分を世話する側に回るとは思わなかった。まだ介護が必要な年齢ではないつもりだ、さすがのアポロニオでも。

満足したアポロニオはガラガラの声で「もういい」と短く告げる。ぶっきらぼうにも聞こえる声音と態度だが、本当に体力が塵ほども残っていないのだから勘弁してもらいたい。ヴァッカリオに最後の一滴まで搾り取られた気分だ。……まあ、ヴァッカリオにしてみれば物理的に搾り取られたのは自分の方だと言いたいだろうが。

「お兄ちゃん、シャワー浴びる? シャワー行くの大変なら濡れタオル持ってこようか?」

ヴァッカリオがアポロニオの顔色を伺うように尋ねる。ご機嫌取りに勤しんでいるらしい。そんなわかりやすいヴァッカリオに、アポロニオは肩を小さく震わせて笑った。あれほど、隠し事が得意で様々なことをアポロニオから隠し通してきた男だというのに、こうしてアポロニオが少しでもツンとした態度を取れば、わかりやすく狼狽えてしまう。

これも自分の前でしか見せないヴァッカリオの姿と知ってからはますます愛おしくなったし……振り回す快感、というものに、アポロニオも目覚めてきたのかもしれない。

あの強く優しく賢くおまけに二枚目ときた完璧な男が、自分の態度ひとつで右往左往して萎びたりわかりやすく興奮してくれたりするのだ。こんなに面白いことが人生に存在したとは、アポロニオもそれなりの年数を生きてきて初めて知った。むしろこの年になって、新しい趣味を得たのかもしれない。

「お兄ちゃん?」

黙って反応を示さないアポロニオに、焦れたようにヴァッカリオが声をあげる。そこにどことなく不安の色が乗っているのは、間違いない。

振り回すのは楽しいが、何もヴァッカリオを悲しませるのが趣味なのではない。アポロニオは不安と心配に揺れるヴァッカリオの瞳を覗き込んで、その頬におっとりと手を当てた。

「シャワーもタオルも後でいい」
「じゃ、じゃあ……」
「わたしはいま、とてもねむいのだ」

くすり、とアポロニオは笑みを零す。実際、夜更しして事に及んでいるのだから、昼型の健全な生活を送っているアポロニオにとってはもう熟睡していてもおかしくない時間帯だ。何より、くどいようだが体力がない。

ねむい、と言い放ったアポロニオに困惑しつつも、ヴァッカリオはそっと兄の体をベッドに横たえ、毛布を肩まで引き上げる。と、そこに、にんまりとした笑みを浮かべたアポロニオがぽんぽんと毛布を叩いてヴァッカリオに合図を送っていた。

「いっしょにねよう」
「えっ」

ヴァッカリオはシャワーを浴びてさっぱりして、そうしたらアポロニオとは離れて寝るつもりだったのだ。暑苦しいから。

だが、アポロニオのだめか?と言わんばかりの視線に勝てるわけもなく、ヴァッカリオはおとなしくアポロニオから体を離してベッドに潜り込んだ。

……が、すぐにアポロニオがぴとりと体を密着させ、ヴァッカリオの胸に顔を擦り寄せる。それだけではない、足まで絡めてきた。当然、ここまで密着すれば、男の大切な部分だって触れ合う。先程出したばかりで、まだそれなりに敏感な場所が。

アポロニオはヴァッカリオに見えぬところでいたずらめいた悪い笑みを浮かべている。ヴァッカリオの汗臭く、しっとりと濡れた胸板にゆるく頬ずりをして、絡めた足を意味有りげに動かし。ヴァッカリオの手が宙をウロウロと彷徨ったあとに自分の背中に回されたのを感じて、満足そうに頷いた。

「お、お兄ちゃん、あの——」
「おやすみ、ヴァッカリオ」

ヴァッカリオの言葉を遮ってアポロニオはちゅ、と可愛らしいリップ音を立てて「おやすみのキス」を送った。おやすみのキスは、おやすみの合図だ。さあおやすみ、ヴァッカリオ。

アポロニオは何度か頭の位置を調整して、満足の行く位置を決めてから目を閉じた。ヴァッカリオのまだ火照った体から伝わる熱いほどの体温に、眠気も焼かれてしまいそうだが。それでも眠いものは眠いし……何より、あまり我慢も加減もできない子供には多少の躾も必要だ。

アポロニオの背中に手を回したままのヴァッカリオの口から悲痛な「お兄ちゃん……!」との小さな囁き声が零れ落ちる。アポロニオはそれを聞かなかったことにして、速やかに眠りの国へと足を踏み入れた。

……色気を全身から迸らせたままのアポロニオを抱いて、ヴァッカリオは一晩を悶々と過ごす羽目になる。

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