1&2月分Web拍手お礼SSまとめ - 5/10

自作ネタで申し訳ないですが、「恋愛アバターゲームにハマったお兄ちゃん」のヴァカアポ。普段は露出の少ないアバターばかり着用してるお兄ちゃんなのに今日は……!


※お兄ちゃんキャラ崩壊注意、なんか恋愛ボケしてます

 

 

 

アポロニオはヴァッカリオと「結婚」をしている。そう、女子高生に流行っている、ソーシャルゲームの中で。リアルの方は、先日お付き合いを始めたばかりだ。恋人になっても特に変わらず、アポロニオは今日もゲームを楽しんでいる。

「明日はガチャ更新の日か……」

アポロニオの口から発せられる本人のイメージとは程遠い「ガチャ」という単語。一人、執務室での昼休み中だから、誰もその単語を耳に入れなかったのは幸いだろう。他の人が聞けば、あっという間に噂になってマスコミの格好の週刊誌ネタになっているはずだ。

そんな事には思い至らず、アポロニオはぎこちなくも端末を操ってゲーム内のお知らせを確認する。ローズピンクとでもいえば良いのだろうか、やや濃いめのピンクが新ガチャのモチーフらしい。今日はアバターのチラ見せのみ。特別、アポロニオはアバターに好みがあるわけではないが、このタイミングでのガチャ更新となればきっと新ガチャのアバターを使ったイベントでも始まるだろう。

アポロニオはこれまでコツコツと貯めてきたガチャ用のチケットやガチャを回すためのクリスタルの在庫を確認して、明日に備えることにした。ヴァッカリオはヴァッカリオでマイペースに遊んでいるようだし、まあ、イベントが始まってから連携を確認すればいいだろう、と。

そう思ってのんびりしていたアポロニオは翌日の正午。ガチャ更新とともに公開されたアバターの数々、そしてイベントの種類に目をまん丸に見開いていた。

「こっ、これは……これは!」

破廉恥、と叫びそうになったところを何とか抑える。アポロニオだってこのゲームの「過去ガチャ」には異様に露出が多い、セクシー系のアバターが存在していた事も知っている。とは言え、アポロニオがゲームを始めてからは遭遇したことがなかった。そう、そんな「セクシー」なアバターだけを取りそろえたガチャに。

アポロニオはクエストを確認して、ガチャ画面に戻って、ということを繰り返している。イベントクエストの内容はいつも通り、新作ガチャのアバターを身に着けてデートスポットに行こう! だとか、結婚相手に〇〇をプレゼントしよう! だとか。至って変わりはない。

が、しかし、ガチャ画面に表示されているアバター画像は……どれもこれも……非常に目のやり場に困る……ほぼ下着の様な……スケスケ……。うう、とアポロニオは顔を赤くして端末ごと執務机に突っ伏した。

ヴァッカリオと恋仲になる前までは、別にアポロニオも普通に「ゲーム」として遊んでいただけだった。ある種、ドライに対応していたといっても過言ではない。ゆえに、こういったアバターがあっても、着替えることになっても、何とも思わなかった。しかし、今は違う。ヴァッカリオと「そういうこと」をしてもおかしくない仲になってしまったのだ。

ちなみに、この二人、まだキス止まりである……! 舌すら入れたことがない、粘膜接触経験ゼロの清らかなお付き合いをしているおじさんカップルだ。

「私がこれを着て……着るのか、私が……いやこれをヴァッカリオに送る……こ、こんなハ、ハ、ハ、ハレンチ極まりない……っ!」

一応、アポロニオもヴァッカリオも男アバターをメインとして使っている。今回のガチャでも男性用は女性用ほどでは……と思ってアポロニオはそ~っとページをめくってみたが、やっぱり男性用でもセクシーなものはセクシーだった。上半身裸で、黒のタイトなレザーパンツはなぜか前面のチャックが開いて今にも股間が見えそうになっている。が、そこは見えないようにちょうどよくキャラクターの手で遮られていた。女性用のほうは、もう言わずもがな。ほぼ下着姿に、シースルーな上着がふわりと肩にかけられているだけ。

そして、どちらのアバターも。ベッドの上にしどけなく座って、意味深に視線を落としている……まあ、鈍いアポロニオでもわかるぐらいに、夜のお誘いをしている姿だった。

どうしよう、どうしよう、とアポロニオは一人で焦っていた。イベントクエストのため、と割り切るほどの潔さを恋愛初心者偏差値ゼロのアポロニオは持っていない。むしろ――

「こ、こ、こんな衣装を着て、ヴァッカリオに誤解されたら……!」

――などと思い至ってしまい。思い至り。……閃いてしまい。

つまり。つまりだ、今、自分たちは唇をぶちゅっとくっつけるキスしかしたことがない。そこから一歩進むために、このアバターを使ってヴァッカリオにアピールすることができるのでは……!?

360度思考が一周したアポロニオは顔を真っ赤にしたまま、変なことを閃いてしまった。アポロニオとて人の子、それなりにアレとかソレとかの欲望は持ち合わせている。

そうと決まればアポロニオのヤる事……違った、やる事は早い。さくっと新作ガチャを引き、お目当てのアバターをいくつか引き当て(もちろん、これはアポロニオが豪運の持ち主だからに他ならない、凡人はガチャで一点狙いなんてやめておこう!)、それらを身に着ける。出来上がったのは、女性アバターでほぼ下着姿のキャラクターがベッドに座って、うるんだ瞳と赤くぽってりとした唇で誰かを見ているプロフィール画像だ。

「うっ、こんな姿……は、恥ずかしい……い、いや、しかし……」

アポロニオはぶつぶつと呟きつつも緊張で震える指を操り、ヴァッカリオのアカウントへといくつかプレゼントを送った。これでよし、と息を吐いた直後、昼休み終了5分前の予鈴が鳴る。現実に戻されたアポロニオは顔を真っ赤にして端末をわたわたと両手でお手玉した後、ようやくリュックに突っ込んだのだった。

 

ところ変わって定時後のディオニソスフォース。ヴァッカリオは少しだけ部下と打ち合わせという名のサービス残業をしてから、ようやくフォースのビルを出た。いそいそと個人端末を取り出して、アポロニオに「今から帰る」とメッセージを送ろうとする。と、通知バーに例の恋愛アバターゲームのアイコンがあることに気づく。

「お、珍しいじゃん、お兄ちゃんからプレゼントだって」

もっぱら、ヴァッカリオがアポロニオにプレゼントしてばかりだ。貢いでる、と言われても致し方ないほどの頻度と金額だ。しかし、アポロニオに貢いでいると心が安らかになる。受け取った後アポロニオが嬉しそうにしてくれるのを見るだけで、疲労やストレスがきれいさっぱり消えていくのだから、アポロニオに貢ぐのはやめられない。こんなに貢ぐのが楽しいだなんて、ヴァッカリオは生まれて初めて知った。

いったい何をくれたのだろう、とゲームを起動して画面を見る。歩きゲームはご法度、ゆえに確認するのは通勤に使っている車の中だ。ほかの車にもフォースの職員がそれぞれ乗り込んで、帰宅していく。早く帰りたいのはヴァッカリオも同じだが、今はそれよりゲームのほうが気になって仕方がない。

そうして開いたプレゼント画面には、二つのアバターが。ファッションのほうではなくて、画面上に配置するメッセージアバターだ。

「……『早くきて』『熱くして』……えっ……」

二つのメッセージを読んだヴァッカリオは絶句する。もし、そのメッセージを額面通りに受け取るなら……と、そこまで考えて、ヴァッカリオは頭を振った。まさか、あのアポロニオがそんなことを考えるわけもないだろう。きっと、新ガチャでダブりが出てしまったに違いない。たまたまだ、偶然に決まっている、とヴァッカリオは半ば言い聞かせるようにしながら、プレゼント画面を閉じる。

そんなヴァッカリオが何となく開いたアポロニオのプロフィールページには。セクシーランジェリーを身に纏った「女性」アバターがベッドにしどけなく寝そべっていて。

「あれ、お兄ちゃん、午前中までは普通に男だったよね新ガチャも男女両タイプ対応のやつだよねなんでわざわざ女性アバターにしてああああああああ!!!」

そこまでヴァッカリオは盛大に車の中で叫んだあと、すぐにエンジンをかけてアクセル全開で飛び出していった。

 


果たしてキスどまりだった二人が勢い余って一線を越えてしまったのか。それはまた、別の話でもあり、秘密の話でもある。

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